2018.09.18

奇跡はならずも室屋義秀は笑顔。
エアレース第6戦で泥沼から抜け出す

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 今季のレッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップは、8月にカザン(ロシア)で行なわれた第5戦終了時点で、トップ3による激しい年間総合優勝争いが繰り広げられていた。

 チャンピオンシップポイントランキングでトップに立っていたのは、55ポイントのマイケル・グーリアン。これを追って、49ポイントのマルティン・ソンカとマット・ホールが並んでいた。

 一方で、昨季、初の年間総合王者となった室屋義秀は、もはや風前の灯だった。

 第3、4、5戦で大きくポイントを取りこぼしたのが響き、順位こそ5位(22ポイント)につけていたものの、トップとのポイント差は33と、連覇はもはや絶望的。数字上の可能性はともかく、現実的な可能性は限りなくゼロに近かった。

 にもかかわらず、である。

 現地時間9月15、16日にウィーナー・ノイシュタット(オーストリア)で開かれた第6戦で、室屋はこれまでのうっ憤を晴らすかのように、圧巻のフライトを見せ続けた。

奇跡のエアレース連覇を狙った室屋のフライト photo by Armin Walcher / Red Bull Content Pool まさか、ひょっとして……。

 逆転戴冠の可能性はほぼゼロと知りつつも、そんな期待が少なからず膨らんだことは間違いない。室屋が昨季終盤戦の強さを取り戻していることは、予選の段階から明らかだった。

 まずは予選で、ただひとり58秒台前半のタイムを記録し、一昨季の第7戦以来となる、自身3度目の”ポールポジション”を獲得。ペナルティが続出する荒れた展開のなかでも、室屋のフライトは高水準で安定していた。

 翌日の本選レースに入ってもなお、室屋は落ち着いたフライトを重ねていった。

 ラウンド・オブ・14ではクリスチャン・ボルトンを相手に、無理せず、抑えめに飛びながらも、3秒以上もの大差をつけて快勝。続くラウンド・オブ・8でも、結果的にカービー・チャンブリスのエンジントラブルにより、不戦勝という形にはなったが、59秒578という全体で3番目のタイムを残している。室屋が語る。

「前日とは風向きが変わっていたので、ラウンド・オブ・14はリスクを負わず、予定どおりのタイムで飛ぶことができたし、ラウンド・オブ・8も、タイム的には問題ないと思っていたが、カービーはときどきとんでもないタイムを出すことがある。確実に勝ち上がるということではラッキーだった」