ル・マンのトヨタを襲った「早すぎる悪夢」。再び挑戦の1年が始まる (2ページ目)

  • 川喜田研●取材・文 text by Kawakita Ken 写真提供:トヨタ自動車 photo by TOYOTA

 ところが、レースが間もなく8時間を迎えようとしていた22時47分、トヨタを取り巻く状況が一気に暗転する。まずは中嶋一貴、セバスチャン・ブエミ、アンソニー・デビッドソン組のトヨタ8号車に、ポルシェ2号車と同様の「前輪モーター」の問題が発生し、ブエミが緊急ピットイン。モーターやバッテリーなど、ハイブリッドシステムの交換のため、ピット作業に1時間59分を要して優勝争いから脱落してしまう。

 続いて、日付が変わったばかりの0時44分には、他のマシンの事故でセーフティカーが導入されている間にステファン・サラザンから小林可夢偉へのドライバー交代を終え、コースに復帰しようとしたトヨタの7号車がクラッチトラブルに見舞われてストップ。なんとかモーターの力だけでピットまで7号車を連れ帰ろうと必死の努力を試みる可夢偉だったが、その奮闘空しく、約20分後にマシンを止めてリタイアした。

 悲劇はこれで終わらない。1時13分にはニコラス・ラピエール、国本雄資 ホセ・マリア・ロペス組のトヨタ9号車が、ラピエールのドライブ中にストレートエンドで後方からLMP2クラスのマシンに追突され、リヤタイヤとマシン後部を大破させてしまう。こちらもピットに戻ることができず、レース距離のわずか3分の1を過ぎたところでトヨタ勢の2台がリタイアし、トヨタ初優勝の夢が遠のいてしまうことになった。

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