ル・マンのトヨタを襲った「早すぎる悪夢」。再び挑戦の1年が始まる (3ページ目)

  • 川喜田研●取材・文 text by Kawakita Ken 写真提供:トヨタ自動車 photo by TOYOTA

 レース後、可夢偉は「ガックリ? なんとでも書いてください。今の気持ちなんて言葉にできないですよ」と無念を口にした。

「夜に入ってから、2位のポルシェとの差が1分ぐらいに開いて僕の順番が来たので、『自分たちのペースも、周りの様子も分かってきた。クルマが十分に速いんだから、無理に縁石に乗り上げたりしないで、リスクを冒さずに落ち着いて自分たちのレースをやろう』とみんなで話していた直後に、何の前ぶれもなくクラッチが壊れてしまったんです。

 去年は本当に勝てるか分からない部分もあったけれど、今年はトラブルが起きるまで、これ以上ないル・マンでのレースウィークを過ごしていたと思うし、実際に勝てるレースができていた。走り続けていればチャンスはあったはずなのに、まさかピットに帰ることすらできないなんて......」

 8号車の中嶋も、「トラブルが出たのがスタートから約8時間後とあまりにも早すぎて、悔しい以前に戦ったという実感すらない。(トラブルが出た)場所といい、タイミングといい、ツイていない・・・・・・と言うのには余りにも・・・・・・」と言葉を詰まらせた。

 レースはその後、LMP1Hクラスで唯一「無傷」のポルシェ1号車が着々とリードを広げ、勝利をほぼ手中にしたかと思われたが、悪夢に見舞われたのは、ポルシェも例外ではなかった。ゴールまで残りあと4時間というところで、アンドレ・ロッテラーがドライブするポルシェ1号車が油圧低下の症状と共にスローダウン。電気モーターだけでピットにたどり着こうと、ノロノロとマシンを走らせ続けたロッテラーだが、最後はコースサイドにマシンを止め、こちらも無念のリタイアとなる。

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