カル・クラッチローがMotoGP初優勝なんと英国人は35年ぶり

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 カル・クラッチロー(LCRホンダ)の第11戦・チェコGP優勝は、多くのイギリス人に笑顔をもたらした。なにせ、英国人が最高峰クラスで優勝するのは、1981年・スウェーデンGPのバリー・シーン以来、35年ぶりの快挙なのだ。MotoGPのパドックでは、各チームスタッフやレース主催者、運営オーガナイザー、メディア関係者など各分野で多くのイギリス人が働いている。決勝レース後の彼らは、いちように満ち足りた笑顔をうかべているようにも見えた。

英国人として35年ぶりに最高峰クラスで優勝したカル・クラッチロー(中央)英国人として35年ぶりに最高峰クラスで優勝したカル・クラッチロー(中央) タイミング、という意味でも今回の快挙は理想的な勝利だった。

 クラッチロー自身にとっては、愛妻との間に初めての娘が生まれてから2週間後。優勝直後には、「妻の出産は人生で最高の瞬間だったから、今回はどんな気持ちになるかと思ったけど、やっぱり娘が生まれたときが最高だった。でも、今日は別の意味ですごくうれしいし、レース人生で最高の1日になったよ」と、幸福の極みにある素直な気持ちを述べた。

 また、イギリスのレース関係者やファンにとっては、上記のとおりバリー・シーン(生没:1950年~2003年)以来、35年ぶりという非常に象徴的な勝利である。バリー・シーンは1976年と1977年に500ccクラスの総合優勝を達成した人物で、それらの功績により英国王室から大英帝国勲章を授与されており、イギリス・モータースポーツ界を代表する存在だ。その重みを理解すれば、今回の快挙にイギリス人が沸き立つのも納得できるだろう。

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