【F1】速すぎるメルセデスにライバル勢は追いつけるのか? (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 メルセデスAMGの本来の速さが披露されたのは、41周目の事故でセーフティカーが導入され、残り11周でレース再開となってからだった。どのマシンも、燃費とタイヤ劣化の心配がほとんどなくなり、ここからチェッカーまでスプリントレースになった。

 それに加えて、メルセデスAMGの2台は異なる戦略を選び、異なるタイヤを履いてコース上で本気の優勝争いを繰り広げていた。だから彼らは、フルパワーに近い状態で走った。おそらく、予選以外で彼らの本気の走りを見ることができたのは今季これが初めてのことだ。

「ニコの履いていたソフトタイヤの方が1周あたり0.65秒は速かったはずだから、ニコを抑えるのはかなりタフだった。今まで経験した中で最もタフな状況のひとつだったね。最後の10周は完全に全開だったよ」

 そう語るハミルトンとロズベルグは3位のフォースインディアよりも1周で2.5~3秒も速い驚異的なペースで走り、激しいバトルを演じた。これこそがメルセデスAMGが他チームとの間に築き上げている現状のギャップだ。

 圧倒的なワンツーフィニッシュを飾ったメルセデスAMGだが、自分たちの置かれた状況に安穏としているわけではない。

「勢力図なんて、レースごとにリセットされる。サーキットの特性やコンディションが違えば、勢力図は大きく変わりうる。マレーシアでの雨の予選で、あれだけ差が縮まった(ポールのハミルトンと2位ベッテルは0.05秒差)ことを見れば、それは明らかだ。アップグレードを持ち込んだチームが大きく進歩することだってある。どのチームがアップグレードを投入して車体面やPU面で進歩を果たすのか。それはレースウィークが始まってみるまで分からない。僕らだってこの差が縮まらないように努力し続けなければならないんだ」

 他のメルセデスAMG製PUユーザーチームには車体性能で差を付けていても、レッドブルに対しての差が車体ではなくPUにあることも彼らは分かっている。雨が降ればPUのパワー差は帳消しになり得るし、他メーカーのPUの熟成はやがて進んでいく。ルノーとてソフトウェアの改良は着実に進めており、バーレーンには内部部品を改良した新世代の内燃機関エンジンをレッドブルとトロロッソに投入している。

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