2014.04.03

【F1】小林可夢偉、やっと完走も「ホッとしている場合じゃない」

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「俺は一体、なにしてんねやろ?」

 マレーシアGPの週末が始まった金曜の夜、小林可夢偉(ケータハム)はホテルのジムでランニングをしながらふと思った。

「金曜日の夜にこんなことしてることなんてないもんね。土曜日やったら分かるけど、金曜日やからね」

 F1ドライバーは前後左右のG(重力加速度)と暑さという過酷な環境の中で305km、約2時間の決勝を走り続けられるだけの体力づくりを日々続けている。だから、周回数が比較的少ない予選日の土曜日は、基礎体力を維持するためにランニングやサイクリングをすることも少なくない。

マレーシアGPで13位完走だったケータハムの小林可夢偉 ただ、計3時間のフリー走行でレース距離以上の周回数を重ねる金曜日は、本来ならば、そんな必要に迫られることなどない。たとえば、メルセデスAMGのルイス・ハミルトンは金曜日だけで53周を走り込んでいる。しかし可夢偉のマシンは開幕戦に続いてトラブルが続発し、この日もたったの5周しか走ることができなかった。

「ご飯だけ食べに(サーキットへ)来たみたいになってるんで、それだけは勘弁して欲しいですね(苦笑)。ここまで走れないというのも珍しい。僕はただ走りたいだけやのに......」

 もちろん、可夢偉はサーキットでただ食事だけして無為に1日を過ごしているわけではない。エンジニアたちとミーティングを重ね、今後のセッションや開発についての議論を重ねている。

 しかし、クルマが走らないことには、できることにも自ずと限界は見えてくる。

「僕らはまだ何もセッティングができていないんです。開幕前のテストからずっとね。それをやったらどれだけクルマに効果が出るか、まだ分からない。走れれば開発も進んでいくかもしれないけど、走れないことには何もできないですから。このクルマの悪いところを確認して、今後につながるデータ取りをしないと」

 現状、ケータハムCT05はまだ可夢偉が本来のドライビングができるレベルに到達していない。クルマの持っているポテンシャルは別としても、ドライバーがクルマを信頼し、その限界まで攻めていける状態ではないのだ。