【MotoGP】来季はさらに熾烈?接戦の連続だった2012年の「ホンダ対ヤマハ」 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 ロレンソは冗談交じりにそう言うが、今年のYZR-M1は800cc時代よりもトップスピードで12km/h速くなっている。エンジン回転数とパフォーマンスも800ccを上回っているが、その一方で、車体のバランスを見直して、ホイールベース(前後タイヤの間隔)が伸び、前後の荷重配分は昨年よりフロント寄りになっている。

 1000cc化に伴うこの変更は、タイヤ性能を最大限に引き出しつつ従来の長所である取り回しの良さを維持していく手法で、選手たちのパフォーマンスと併せて見れば、彼らのマシン戦略は見事に成功したことがよくわかる。

 一方のホンダは、このタイヤへの合わせ込みに関して、特にシーズン前半戦で苦労を強いられた。ストーナーとダニ・ペドロサは、ともに開幕前から深刻なチャタリング(マシン、とくにフロント周りの細かい振動)を訴えてきたが、第6戦イギリスGPからフロントタイヤの供給が彼らの好まないスペックになったため、課題の解決はさらに急務となった。

 この対応として、HRCは本来2013年用として開発を進めていた車体を前倒しして両選手に投入。ストーナーは後半戦開始早々に転倒を喫して数戦の欠場を強いられたが、ペドロサがその穴を補ってあまりある活躍を見せた。破竹の連勝劇でロレンソへの追撃を開始。逆転チャンピオンとはならなかったものの、シーズン7勝は今季最多。ホンダのコンストラクターズタイトル獲得に、このペドロサの快進撃が大きく貢献したことはいうまでもない。

 ストーナーとペドロサ両名では12勝を挙げており、HRCチーム代表の中本修平は「残念ながらライダーズタイトルこそ獲得できなかったが、チームとコンストラクターのタイトルは獲得できた。その意味では、いいシーズンだったと思う」と一年間を振り返っている。

 このときの会見では、2013年からレプソル・ホンダに加入するマルク・マルケスに関していくつもの質問が飛んだ。中本は「マルクは才能豊かな選手だが、MotoGPは簡単な世界ではない。まずは経験を積み重ねることが必要。とはいえ、たとえ初年度でも勝てる資質を充分に備えていると思うので、ぜひ勝ってほしいとも思う」と述べている。

 この中本たちHRC側の期待は、マルケスも充分に理解をしているようだ。「MotoGPは、Moto2と電子制御やタイヤや乗り方が違うので、まずそれらの項目について楽しみながら順応していきたい」と、来年に対する抱負を語った。

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