予算は5万円。福島競馬場から北陸道をゆく「旅打ち」へ、いざ出発! (2ページ目)

  • 新山藍朗●取材・文 text&photo by Niiyama Airo

7年前に購入した時刻表7年前に購入した時刻表この記事に関連する写真を見る そうして、その時の"旅打ち"はなんとかやり終えた。大変なことはたくさんあったが、あの時の体験は今でもいい思い出として残っている。

 最も強烈だった思い出を挙げれば、北海道へ渡る前のことだ。深夜、青森駅から青函フェリーの埠頭まで、重いキャリーバックを引きずりながら延々と1時間ほど歩いたことだ。

 民家も何もない暗がりのなかをひたすら歩いた。肉体的にもしんどくて、「この道でいいのか?」と何度も不安に苛まれた。やや途方に暮れ、ひどい窮地に陥ったような心境になったものだ。

 そうすると、火事場のなんとかとでも言うのだろうか、無意識のうちに『われは海の子』を口ずさみ、終(しま)いには『東京音頭』を大声で歌っていた。

 不思議なことに、それで少し元気が出た。「人間って、そういうものだなぁ(どういうものかと聞かれてもうまく説明できないが......)」と、しみじみ感慨に浸ったことを今で鮮明に覚えている。

 というわけで、今回の"旅打ち"である。

 コロナ禍ではすべての競馬場が無観客で開催され、以来馬券の購入もネットが主流となった。だが、コロナが明けた今、改めて現場のよさを体感すべきではないか――T氏によると、そんな意図もあるそうだ。

 そして、今回の行程だが、福島競馬場からスタートし、金沢競馬場、新潟競馬場へと足を運ぶ予定だ。その間、同地域の競輪場やボートレース場にも立ち寄ってみようと思う。

 競輪やボートレースには馴染みはないものの、ビギナーズラックということもある。案外、いい結果が出るかもしれない。

 予算は5万5000円。渋るT氏を口説いて、前回から消費税分5000円の増額になんとか成功した。これでもキツいが、T氏が言うように、究極「勝ちゃいいのだ」。

 さぁ、まずは『青春18きっぷ』を買いに行こう!

(つづく)

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