3歳牝馬唯一の重賞2勝馬キタウイング。陣営も期待していなかった地味な存在がクラシックで最高の輝きを放つか

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Sankei Visual

2023年クラシック候補たち
第7回:キタウイング

 今年の3歳牝馬戦線において、重賞を2勝している馬が1頭だけいる。美浦トレセンの小島茂之厩舎に所属するキタウイング(牝3歳/父ダノンバラード)である。

フェアリーSを制して重賞2勝目を挙げたキタウイングフェアリーSを制して重賞2勝目を挙げたキタウイングこの記事に関連する写真を見る 父は、同馬が出るまで重賞勝ち馬を出したことのなかったダノンバラード。母系の血統も地味で、デビュー当初から注目されるような存在ではなかった。実際、昨年7月のデビュー戦では8番人気で4着という結果に終わっている。

 しかし、そこから誰も想像していなかったような活躍を見せる。2戦目となった2歳未勝利(8月21日/新潟・芝1600m)で鮮やかな差しきり勝ちを決めると、連闘でGIII新潟2歳S(8月28日/新潟・芝1600m)に挑戦。牡馬相手に重賞勝ちを決めたのだ。

 道中はほぼ最後方の内を追走。直線、ライバルたちが荒れた内を避けて外ラチまで広がって仕掛けるなか、同馬は最内となる馬場の真ん中から脚を伸ばして突き抜けた。メンバー最速の上がり33秒0をマークしての快勝。一躍、牝馬戦線の有力候補に躍り出た。

 続いて挑んだのは、2歳女王決定戦となるGI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月11日/阪神・芝1600m)。4~5番手の好位につけてレースを運んだが、前半1000mが57秒0というハイペースのなか、自慢の末脚が影を潜めて14着と大敗を喫した。およそ3カ月半の休み明け、ということも影響したのかもしれない。

 この結果、新潟2歳S勝ちまでフロック視されてしまったのか、キタウイングの評価はデビュー当時に逆戻り。年明けに挑んだGIIIフェアリーS(1月9日/中山・芝1600m)では、11番人気という低評価となった。

 16頭立ての7枠14番という厳しい枠からのスタートとなった同レース。馬群から離れた後方15番手を追走していく。それでも、3コーナー過ぎから最内をスルスルと進出。そのまま直線でも内ラチぎりぎりを突いて、坂を上った辺りで先頭に立ち、最後は外から強襲してきたメイクアスナッチをアタマ差しのいだ。下馬評を覆す、圧巻の勝利だった。

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