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ウマ娘では世界的なお嬢様。武豊も「幸せ」と感じたファインモーションとの出会いと圧倒的な走り (3ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

無敗のままGⅠへ

 無敗のまま、いよいよGⅠの舞台に上がる。その一戦はGⅠ秋華賞。桜花賞、オークスに続き、3歳牝馬が世代限定で戦うGⅠ。その最終戦である。単勝は1.1倍。GⅠとなればレベルが違うという思いもありつつ、それ以上にファインモーションの強さを楽しみにした。

 そしてこの期待感に、あっさりと応えてくれた。デビュー戦以来のコンビとなった武豊を背に、道中5番手を追走。前にいる馬をじっくり見ると、4コーナー手前で大外から一気に先頭へ並びかけていく。といっても仕掛けている様子はない。まさに"馬なり"のまま上がっていく。

 直線入口で持ったまま先頭に並ぶと、軽く仕掛けて抜け出した。ジョギングのような走りで、3馬身半差のGⅠ初戴冠。実況は何度も「強い」と叫んだ。

 一体どれだけ強いのか。きっと誰もがこの馬に夢を見たはずだ。もしくは、末恐ろしさを感じたかもしれない。

 そんななか、次のステップに挑んだのがGIエリザベス女王杯である。これは、3歳以上の牝馬が戦うGⅠ。ファインモーションは歳上牝馬と相対することになる。

 もちろんその分、勝つのは難しくなるはずだが、ファンは負ける姿など想像できなかった。単勝1.2倍。ここはあくまで通過点であり、どれだけの強さを見せてくれるのか、焦点はそこにあったといえる。

 GⅠを勝った歳上牝馬がいる。歴戦の強者もいる。だが、この馬の走りはまったく変わらなかった。スタートを切ると、道中は2、3番手につけて先頭を見る形。早くもいつものパターンだ。

3コーナーを3番手で通過すると、4コーナー手前で武豊がゴーサインを出した。わずかに手が動いたのだ。その瞬間、ギアが一段上がったかのように、なめらかに加速し、いとも簡単に先頭に並んでいく。そして、一瞬で突き放した。直線入口ではもう一頭抜け出していたのである。

 うしろからは、フランスの名手オリビエ・ペリエが乗ったダイヤモンドビコーが追いかけていた。この馬も重賞を3つ勝っている実力馬だ。一瞬追い詰めるようにも見えたが、残り200mあたりからファインモーションの脚色がさらに増したのだ。

 ゴール前ではさらに加速し、2馬身半の差をつけて悠々と勝利を決めた。「新しい歴史の扉、今開かれました」という実況のフレーズともに、大歓声に包まれたのだった。

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