ウマ娘でも闘争心全開で走り抜けるタマモクロス。天皇賞・秋は語り継がれるべき「芦毛の名勝負」だった

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

 胸には白い稲妻のマークを掲げ、小さな体でもライバルに屈せず、むしろ強い闘争心で立ち向かっていく――。スマホゲーム「ウマ娘 プリティダービー」には、そんな個性派キャラクターがいる。ウマ娘のタマモクロスだ。

天皇賞・秋でオグリキャップとの勝負を制したタマモクロス天皇賞・秋でオグリキャップとの勝負を制したタマモクロスこの記事に関連する写真を見る このウマ娘のレーススタイルといえば、基本的には中団から後方に位置し、直線に入ると闘争心全開で前方のライバルを猛追する。人呼んで「白い稲妻」。胸の稲妻マークは、その"異名"がもとになっているのだ。また、ウマ娘・オグリキャップとのやり取りも多く、名コンビとされている。

 モデルとなった競走馬・タマモクロスは、まさに闘争心を全面に出して、強烈な末脚でライバルをなぎ倒していった1頭。そんなこの馬がキャリアのピークを迎えたとき、宿命のライバルとしのぎを削った舞台がある。1988年の天皇賞・秋(東京・芝2000m)だ。

 そして、この宿命のライバルこそ、オグリキャップだった。

 1987年10月、デビューから8戦したタマモクロスはもがいていた。1勝こそ挙げたものの、そのあとは勝てない。特に4戦目では、前の馬に巻き込まれてレース中に落馬。騎手のいない状態で暴走してしまう。このトラウマのためか、他馬を怖がるように。低迷が続き、GⅠや重賞レースにはほど遠い、下級クラスに甘んじていた。

 しかし、大変身の時が訪れる。しばらくダートのレースを走っていたタマモクロスが、久々に芝のレースに挑むと7馬身差の圧勝劇。さらに次戦でも8馬身差のワンサイドゲームを演じたのだ。

 勢いに乗ったタマモクロスは、このまま重賞レースに挑む。そしてその舞台でも、本格化したこの馬の強さは衰えることがなかった。GII鳴尾記念、GIII金杯(西)、GII阪神大賞典と、重賞3連勝を飾ったのである。条件戦と合わせて5連勝の快進撃だった。

 実はこの重賞3連勝こそ"タマモクロスらしい"という意味で見てほしいレースだ。というのも、タマモクロスは後方からレースを進めて、直線で追い込むスタイル。それが災いとなったのか、この重賞3レースでは、いずれも直線入口で他馬に囲まれ、行き場がわずかしかない状況に。しかし、まったくひるむことなく、むしろ闘争心に火をつけて、わずかな隙間をこじ開けて追い込んできたのである。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る