ウマ娘に描かれているイメージどおりの「負けん気」。カワカミプリンセスは秋華賞を猛々しく勇ましく走った (2ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

 北海道の三石川上牧場で生まれた牝馬は、牧場の大きな期待を込めてカワカミプリンセスと命名。2006年にデビューを迎えた。

 通常、サラブレッドは2歳夏からデビューするが、彼女の初陣は3歳2月。その"遅れたデビュー戦"を勝つと、以降は破竹の連勝を飾っていった。初戦、2戦目、3戦目と、一気に3連勝を飾ったのである。

 3歳牝馬は、春から秋にかけて同世代で3ラウンドのGⅠに挑む。「牝馬三冠」と言われるもので、4月に第1弾の桜花賞、5月に第2弾のオークス、10月に第3弾の秋華賞が行なわれる。

 カワカミプリンセスはデビューが遅れたため、第1弾の桜花賞は間に合わず。しかし、第2弾のオークスには、3戦無敗という華々しい成績で出走することとなった。

 1、2番人気に支持されたのは、三冠初戦の桜花賞で上位を占めた馬。カワカミプリンセスは3番人気だった。ただ、レースでは初めての大舞台とは思えない盤石の振る舞い。早いペース、縦長の馬群の8番手につけると、落ち着いた様子で進んでいく。

 3、4コーナーにかけて徐々に外からポジションを上げると、直線では5番手から堂々と抜け出した。内で粘るアサヒライジング、外から迫るフサイチパンドラとの争いになったが、きっちりと勝ち切ったのだ。

 2月のデビューからおよそ3カ月。その名のとおり、女王となったのだ。無敗でのオークス制覇は1957年以来、49年ぶりの快挙だった。

 オークス勝利は文字どおりの大仕事だったが、この後に挑んだ秋華賞(京都・芝2000m)も、彼女にとっては大仕事だったはずだ。なぜなら、当時まだ異例だった「本番直行」という臨戦過程で臨んだからである。

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