ウマ娘に描かれているイメージどおりの「負けん気」。カワカミプリンセスは秋華賞を猛々しく勇ましく走った (4ページ目)
ゲートが開くと、カワカミプリンセスはいつも通りに気合十分の雰囲気で馬群を追走する。お馴染みとなったピンクの勝負服、ピンクのメンコを顔につけて、早いペースの中、馬群の中団より少し前の8、9番手あたりにつけていく。
そして3コーナー。まるで目覚めたかのように、カワカミプリンセスが外から上がる。ただ、4コーナーでは前方のライバルから置かれそうになったのか、早々に本田優がムチを入れて鼓舞するシーンがあった。このあたりは、やはり直行の影響なのか。
直線に入ると、1番人気のアドマイヤキッスは後方でもがいていたが、オークスの3着馬アサヒライジングが先に抜け出し、セーフティーリードを作った。カワカミプリンセスはその3馬身うしろ。ゴールまで残り200mを切った。厳しい状況だった。
しかし残り100m。絶対に負けられないとばかりに、プリンセスはライバルを猛追する。そのフォームからも、負けん気を全面に出して懸命に首を伸ばす姿が伝わってきた。
一歩ずつグイグイと伸びたカワカミプリンセスは、ゴール前できっちりアサヒライジングをかわした。直行の不安を跳ね返し、デビューから無傷の5連勝を飾った瞬間だった。豪快で荒々しい彼女の性格。それを象徴した秋華賞のレースぶりだったと言える。
このあと、はたしてどこまで連勝を伸ばすのか。そんな期待も膨らんだが、実は彼女にとってこのレースが最後の勝利に。続くエリザベス女王杯では1着になりながら、他馬への進路妨害で12着降着。それを境に、好走することはあれど、白星には手が届かなかったのである。
燃え尽きてしまったのか、何らかの変化があったのか、真相は分からない。ただ、秋華賞で見せた負けん気、その強さは忘れるものではない。まさにウマ娘に描かれているイメージのとおりだ。
馬房に掲げられた看板ではないが、「猛馬」という呼び方がしっくりくる1頭だろう。カワカミプリンセスは、猛々しく、勇ましいプリンセスだった。
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