ウマ娘でもオグリキャップは食いしん坊。武豊と勝利した2つの名レース (3ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

 当時、競走馬のスターがオグリキャップなら、ジョッキーのスターは武豊だった。1987年の騎手デビューからわずか3年、GⅠを6勝し、リーディングも獲得した。そんな天才騎手とオグリキャップの邂逅に、世間は熱狂したのである。

 そしてこのレースは、オグリキャップの中でも1番と言えるほどの「完勝」だった。スタート後、初コンビとは思えぬ息の合い方で、すかさず2番手につける。そのまま直線に入ると、武はほとんど手を動かさず、いわゆる"持ったまま"の状態で先頭に立った。

 一気に熱狂する東京競馬場。このとき、外からシンウインドが猛烈な勢いでオグリに並びかけてくる。普通なら、相手にかわされまいと、武もゴーサインを出して応戦するだろう。

 しかし、実際は違った。シンウインドが必死に並びかけ、鞍上の南井克巳がムチを振るうのに対し、武の手はまだ動かない。いまやライバルがかわそうかとしているのに、微動だにしないのだ。つまり、相手にしていなかったのである。まだここでスパートする必要はないと。

 そして、持ったままの状態で先頭をキープし、一度並びかけたシンウインドは逆に後退。完全に抜け出したオグリキャップは、ようやく武の合図とともにスパートして後続を突き放した。

 勝ちタイムの1分32秒4はコースレコードであり、2002年の東京競馬場改修まで、ついに破られることはなかった。

 その後、別のジョッキーと組んで3戦したオグリキャップは、2着、6着、11着と3連敗してしまう。特に11着という2ケタ着順は今までにないもの。このとき、ファンから「オグリを引退させろ」と脅迫する手紙なども届いたという。

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