ウマ娘でもオグリキャップは食いしん坊。武豊と勝利した2つの名レース (4ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

 陣営は、有馬記念で引退することを決断。そしてこのとき、最後の手綱を託したのが武豊だった。

 有馬記念はファン投票で出走馬を選出するレースであり、オグリキャップはファン投票1位で出走した。当日の単勝オッズは4番人気。もちろん、勝利を信じている人もいただろうが、それよりは、オグリ最後のレースの応援を込めて馬券を買った人が多かったのではないか。

 それほど、どんなときでも頑張ってきたオグリキャップが11着に敗れた事実は深刻だったのだ。

 この日、中山競馬場を訪れたのは17万7779人。いまだにレコードである。その大観衆が見守る中、有馬記念のゲートが開くと、オグリキャップは中団6、7番手を追走していく。

 3コーナーで外からすっと押し上げると、3番手、2番手とポジションを上げていった。

 そして直線。まるで前走の敗戦が嘘のように、力強くオグリキャップが先頭に立つ。場内は地鳴りのような歓声になった。ライバルも内外から迫り来るが、最後まで振り切って、引退レースを制したのである。

 ゴール後の熱狂、ファンたちの興奮は頂点に達した。やがて17万人のファンたちは、一斉にオグリコールを始めた。その声に応えるオグリキャップと武豊。間違いなく、競馬界に残る最高のシーンといえる。

 地方から中央に進出し、社会現象を巻き起こしたオグリキャップ。馬産や育成の技術が進んだ今、地方に流れた馬が中央のエリートをなぎ倒すような物語は簡単に起きないかもしれない。それでも、いつかまたこんな1頭が出てくる日を期待したい。サラブレッドは、人に夢を与えてくれる。そう確信させてくれたのが、オグリキャップである。

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