【競馬】ブリランテのダービー制覇を目撃した生産者の「心中」
『パカパカファーム』成功の舞台裏
連載●第37回
競馬界最高峰の舞台となる日本ダービーを3番人気で迎えたディープブリランテ。運命のスタートが切って落とされると、同馬は不安視されたかかり癖を出さずに1コーナーへ向かった。生産者であるパカパカファームのスタッフが見守る中、これまでにないほどのスムーズな走りを見せたのだった――。
フェノーメノ(手前)の追撃をハナ差制したディープブリランテ(奥)。 2012年の日本ダービー(5月27日/東京・芝2400m)は、3歳馬18頭の精鋭が参戦。同じ年に生まれたサラブレッドの頂点を争う戦いは、ゼロスがスタート直後から先頭に立ち、残り17頭をけん引する展開となった。前半1000mの通過タイムは59秒1。2400mのレースとしては、やや速めのペースで流れた。
逃げるゼロスを見ながら、インコースの3番手につけたディープブリランテ。皐月賞のときのように、大きく頭を上げて騎手に抵抗するような素振りは一切見せず、完璧に折り合っていた。パカパカファーム代表のハリー・スウィーニィ氏は、今までとはまったく異なるその姿に、「体調が悪いのかもしれない」と不安を感じたほどだった。
スウィーニィ氏とともにレースを見ていたパカパカファームのフォーリングマネージャー(生産担当)伊藤貴弘氏も、いつになく落ち着いているディープブリランテの走りに驚いたという。
「1コーナーに入ったところではもう落ち着いていましたからね、正直びっくりしました。すごく折り合っているな、と。それでも、レースで勝てるほどの自信は持てませんでしたね。皐月賞では勝利を意識しながらレースを見ていたのですが、ダービーは『何とか3着までに入ってくれ』と願っていたのが本音です。これまでのレースぶりから、距離の面でどうしても不安を感じていました」
ディープブリランテのライバルである、1番人気のワールドエースと2番人気のゴールドシップは、いずれも後方を追走。レースは向こう正面に差し掛かると、先頭のゼロスが2番手以降との差を広げにかかった。そのため、馬群は自然と縦長になった。
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