【競馬】競走馬によって左右苦手な回りができてしまう理由

  • text by Sportiva

元調教師・秋山雅一が教えるレースの裏側
「走る馬にはワケがある」
連載◆第4回

元調教師の秋山雅一氏によれば、競走馬によって、左右それぞれでどちらか得意な回りがあるという。はたして、それを見分ける方法はあるのだろうか。

――前回は、競走馬には左右の回りで、得手、不得手があることを教えてもらいました。そこで今回は、馬によって、左右どちらの回りが得意なのか、その見分け方があれば、教えてほしいと思います。

秋山 残念ながら、見た目だけではわかりません。片方の脚が極端に短い馬や、脚が過度に内向(ないこう/前肢の足先が内側に向いていること)であったり、外向(がいこう/前肢の足先が外側に向いていること)であったりすれば、どちらの回りが得意かわかる場合もありますが、そういうケースは稀(まれ)です。それに、例えば左脚が内を向いている馬がいたら「左回りが下手だろうな」と思うのですが、それが100%正しいとは限りませんからね。実際に走らせてみたら、まったく問題にしないことが多々あります。

競走馬をきちんと育てるために調教は欠かせない。競走馬をきちんと育てるために調教は欠かせない。――見た目には判断できなくても、馬に騎乗してみたらわかることはありますか。

秋山 それも、難しいですね。芝が得意とか、ダートが得意という話と同じで、やはり実際にレースに使ってみないとわかりません。馬によって、得意、不得意があるのは確かですが、それはあくまでも、右回り、左回りの競馬場を、それぞれ同じ条件で、同じくらいの回数を走らせてみなければわからないこと。それが、前提です。その結果、どちらかの回りで良績が集中していれば、そちらの回りのほうが「得意」とか「強い」とか言えるわけです。

――ところで、前回教えてもらった馬の生まれ持った骨組みや運動神経の他に、得意な回り、苦手な回りを生み出すような、外的な要因はありますか。

秋山 得意になるかどうかは別として、馬をうまく走らせるためには、ハミ受けが重要な要素となります。「ハミ」というのは、馬の口に噛ませる棒状の金具のことで、それが騎乗者の手綱につながっていて、騎手はその手綱からハミを通じて馬を動かします。しかし、馬によっては"口が硬い"ことがあって、それは簡単に言うと「反応が悪い」ということなのですが、そうすると、乗り役の意思がうまく伝達できずに、突然内にササったり、モタれたり(レースや調教中に内側に斜行すること)、外へ膨れたりしてしまいます。

 そういう反応の悪い馬のことを「ハミ受けが悪い」と言って、その影響で、右回りはいいけど、左回りになるとスムーズに走れなかったりすることがあります。反対に「ハミ受けが良い」馬は、鞍上の思い通りに反応して動いてくれるので、極端に苦手な回りというのはできませんね。

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