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【競馬】競走馬によって左右苦手な回りができてしまう理由 (2ページ目)

  • text by Sportiva

――ハミ受けの善し悪しは、生まれながらのものではないのですか。

秋山 違います。調教の過程などで、馬が偏った走りを覚えてしまうのが原因です。つまり、ほとんどは調教する人の癖が影響しています。また、もともと持っている利き脚に左右されて、だんだんと口向きが悪くなってくる場合もあります。どちらにしても、そうした馬の癖(ハミ受けの悪さ)は、調教の過程でしっかりと矯正しなければいけません。どちらか片方の回りだけ、ではなく、左右両方とも同じように走れるのが理想ですからね。

――最初から左右変わりなく、スムーズに走れるといいですね。

秋山 もちろん、そういう馬もいますよ。人間でも、スイッチヒッターというか、両利きで、左右同じように字を書ける人が稀(まれ)にいるじゃないですか。それと一緒で、馬にも左右どちらの手前でも違和感なく走れる馬がたまにいるんです。

 以前、私が管理していた馬の中にも、そういう起用な馬がいました。クリスザブレイヴ(19戦9勝。重賞1勝=富士S)という馬で、彼は東京、中山、福島、新潟と、関東圏の競馬場ではすべて勝利を挙げていて、まさにスイッチヒッターのような馬でした。唯一重馬場は苦手でしたが、距離の融通も効いて、本当にバランスのいい馬でした。

――最後にひとつ聞かせてください。右回りが苦手だった馬が、急に得意になることはありますか。というのも、例えば、右回りの競馬場での実績が【0-0-0-7】(※左から1着、2着、3着、着外の数)だったにもかかわらず、いきなり勝ってしまうことがあるからです。

秋山 右回りが下手な馬が、突然上手くなったりすることはありませんね。右回りの競馬場で7回走って7回着外だった馬が勝ったからといって、それは苦手な回りを克服したという話ではないと思いますよ。7回負けた過去のレースは、おそらく体調が整っていなかったり、馬場や展開が合わなかったり、また相手関係が悪かったり、回り以外のファクターが原因だったのでしょう。条件がかみ合わず、たまたま右回りの競馬場での成績が悪かったのだと思います。とどのつまり、馬券検討においては、右回り、左回りがどうこうを考えるよりも、純粋に馬の状態がいいのか悪いのか、そこに重きを置いたほうがいいのではないでしょうか。
(つづく)

秋山雅一(あきやま・まさかず)
  1955年7月28日生まれ。千葉県出身。父・史郎氏が中山競馬場で開業していた調教師で、美浦トレセンが完成した1978年に父の厩舎で助手として働き始める。1991年に調教師免許を取得し開業すると、翌年には18勝を挙げて優秀調教師賞を受賞。2001年には、富士S(クリスザブレイヴ)、七夕賞(ゲイリートマホーク)と重賞を制覇した。2011年、惜しまれながら引退。現在はトレセン近郊の育成牧場でその手腕を振るっている。

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