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【競馬】エサが競走馬に与える影響はどれほどあるのか

  • text by Sportiva

元調教師・秋山雅一が教えるレースの裏側
「走る馬にはワケがある」
連載◆第5回


人間が健康を維持するためには、きちんとした食生活を送ることが大切だ。競走馬にとっても、それは同じこと。栄養のあるものをしっかりと食べなければ、いい馬体は維持できないし、レースでも結果は出ない。そこで今回は、競走馬の"食"事情について、元調教師の秋山雅一氏に聞いてみた。

厩舎で生活する競走馬にとって、日々の運動ときちんとした食生活は欠かせない。厩舎で生活する競走馬にとって、日々の運動ときちんとした食生活は欠かせない。
――まず、競走馬は普段どんなものを食べているのか、教えてください。

秋山 ひと昔前までは、炭水化物、タンパク質、脂肪といった飼料を、単品で分けて与えていました。今は、どこの牧場や厩舎でも、すべての栄養素が入っている『完全配合飼料』というものを食べさせています。

 美浦トレセンのほとんどの厩舎では、その食事を1日2回、与えていると思います。ただ、中には一度にたくさんの餌(えさ)を食べられない馬もいます。また、暑い時期は食べるのに時間がかかると、餌となる『完全配合飼料』の油が酸化してしまうことがあり、それにハエなどの虫が寄ってくることもあります。そのため、1回の食事の量を少なくして、3回に分けているところもありますね。

 例えば、ラーメンを食べるときは、麺がのびないうちに早く食べたほうが美味しいじゃないですか。それと似たようなもので、馬の飼料も新鮮なほうが美味しくて、食べやすいんです。なおかつ、効率よく栄養も吸収してくれます。だから、私が所属する牧場でも、馬体重や馬の状態に合わせて、1日4~5kgの飼料を3回に分けて与えています。

――昔の餌と違って、『完全配合飼料』になってから、競走馬に何かしら変化はあるのですか。

秋山 馬体は、明らかに変化していると思います。かつては、馬体重500kgを超えるような馬は、本当に稀(まれ)にしかいませんでした。それが今では、珍しいことではありません。500kg超える大型馬がたくさんいます。これは、海外から種牡馬や繁殖牝馬がたくさん入って来た影響もありますが、餌の質が向上したことが大きく関わっています。

 なにしろ、餌の栄養価は、今と昔とでは段違いですからね。それに今の餌は、その栄養をより吸収しやすいように進化しているんです。人間の場合でも、例えば日本人なら、戦前と戦時中、そして戦後で食生活が大きく変化して、それに伴って体格も変わってきていますよね。競走馬もそれと同じで、食べ物が変わって、体の作りは近年大きく変化しています。

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