【競馬】ルーラーシップが宝塚記念で証明する、「血」の力

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu
  • photo by Nikkan sports

年明けのAJCC(GII)を快勝したルーラーシップ。その後、香港で初のGI制覇を果たした。年明けのAJCC(GII)を快勝したルーラーシップ。その後、香港で初のGI制覇を果たした。 オルフェーヴルのたどった道筋が「王道」だとしら、ルーラーシップのそれは、王の血を持ちながら王道を進まなかった「邪道」とも言っていいだろう。ならば、2012年4月29日の出来事は、オルフェーヴルという王道と、ルーラーシップという邪道をねじれさせるトリガーだったのだろうか――。

 父はダービーを圧勝し、種牡馬としてもアパパネやローズキングダムなどのGI馬を輩出したキングカメハメハ。母はオークス馬で、牝馬ながらに天皇賞(秋)を勝ち、アドマイヤグルーヴなどの活躍馬を産んだエアグルーヴ。ダービー馬とオークス馬。日本が誇る血の結晶として、この世に生を受けたルーラーシップに課せられたのは、勝つことへの期待などという生半可なものではなく、GIレースを勝つ、という重圧を伴った義務だった。その義務付けられ方は、三冠を制し、有馬記念でブエナビスタに引導を渡したオルフェーヴルが、4歳を迎えたのと同時に課せられたものと酷似している。

 2歳の暮れにデビューしてから香港遠征前までの約2年間、ルーラーシップに与えられた評価は、「ポテンシャルは高いものの、GIIまでは強いがGIではちょっと足りない」というものだった。GIIを3勝にGIIIを1勝。普通なら賞賛されてもおかしくない成績であるのに、ある種の期待はずれのような感覚が拭えないのは、この馬に課せられたものに起因すると言っていい。

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