【競馬】春の天皇賞、暴走オルフェーヴルは本当に『更生』しているか

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Nikkan sports

阪神大賞典では前代未聞の『迷走』ぶりを見せながら、2着でゴールしたオルフェーヴル。阪神大賞典では前代未聞の『迷走』ぶりを見せながら、2着でゴールしたオルフェーヴル。 阪神大賞典の3角手前で大きく外に膨れ、レースをやめようとするオルフェーヴルを見て、以前に聞いた主戦・池添謙一騎手の言葉を思い出した。

 昨秋、牡馬クラシック三冠最後の一戦となる菊花賞の前にインタビューしたときのことだ。池添騎手は、オルフェーヴルの能力の高さや夏を越えての成長ぶりなどについて頼もしげに語りながら、こうつけ加えるのを忘れなかった。

「でも、油断はできません。気を抜くと、何をするかわからないところがあるから」

 池添騎手は、オルフェーヴルのデビュー戦で、ゴールしたあとに振り落とされているが、それが1回限りのアクシデントではないということを、その言葉は意味していた。つまり、いつ何時、再び同じことが起きても不思議はない、そういう性格的な危なさをオルフェーヴルは持っていると、池添騎手は見抜いていたということだ。

 案の定、そのインタビューのすぐあとの菊花賞でも、池添騎手はレース後に再び振り落とされた。そして先の阪神大賞典では、レース中にとんでもない方向に行きかけて、さらにはレースをやめようとした。揚げ句、調教再審査のペナルティーを課せられた。昔も今も、気の悪い競走馬は珍しくないが、こんなに気の悪いGI馬はそうはいない。

 まもなく行なわれる天皇賞・春(春天)でも、最大の焦点は、メンバーの力量比較などよりも、むしろそこだ。断然の「一強」オルフェーヴルに、2度あることは3度あったが、はたして春天で4度目が起きるのか。そこに最も多くの注目が集まっている。

 それにしてもなぜ、オルフェーヴルは阪神大賞典であれほどまでの気の悪さを見せたのだろう。

 関西の競馬専門紙トラックマンが語る。
「悪いのは、馬よりも人間ですわ。まず、いくらトライアルといっても、仕上げが甘い。馬体は緩く見えたし、(オルフェーヴルは)パドックからずっとうるさくて、イライラしっぱなしでした。最初から『危ないなぁ』という感じやったんです。それに、ジョッキーにも油断があったのでは......。もともと行きたがる馬を、道中、あそこまで行かせると、やはり折り合いがつかなくなる。『どう乗っても勝てる』と思っていたのかもしれませんが、結果的に、一番やってはいけないことをやってしまった。あのアクシデントは、いわば人為的ミスですよ」

「気を抜くと、何をするかわからない」というのが、池添騎手のオルフェーヴルに対する評価だから、あのときも決して「気を抜いていた」などとは思わない。ただ、慢心とは言わないまでも、その池添騎手にも、馬を仕上げた厩舎サイドにも、オルフェーヴルの強さに絶対的な信頼を置くがゆえ、逆に甘えのようなものができていたのではないか。そこに、オルフェーヴルの気の悪さが顔をのぞかせる隙が生まれた......。関西専門紙トラックマンのコメントを解説すれば、そういうことになる。

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