「人生ぶつかるJ3」の町田ゼルビア、心の消耗戦に勝ってJ2へ

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 日刊スポーツ/アフロ●写真 photo by Nikkan Sport /AFLO

天国と地獄~J2・J3入れ替え戦(前編)

 世界最高峰のリーグ、スペインのリーガエスパニョーラでは、昇格戦についてひとつの定石が語られる。

<昇格戦はメンタルの勝負になる。しかも、優勝争いの緊張とは種類が異なる。負けたら同じ場所を這う、という切羽詰まった立場に追い込まれると、心がすり切れていく。鬱屈した感情に囚われず、平常心でいられるか。つまり、消耗戦だ>

 下部リーグのチームは技術、戦術的に劣る部分が多いだけに、最後は心理戦になる度合いが増すのだ。では、FC町田ゼルビアは消耗戦をいかに戦い抜いたのか――。

J2昇格を決めて胴上げされる町田の相馬直樹監督J2昇格を決めて胴上げされる町田の相馬直樹監督 2015年12月6日、大分銀行ドーム。J3で2位の町田は、J2で21位の大分トリニータとJ2・J3入れ替え戦に挑んでいる。第1戦は町田がホームで2-1の勝利。この日のアウェー第2戦は、引き分け以上の結果でよかった。

 しかし、このアドバンテージが思いのほか、選手たちの心を不安定にしていた。

「第1戦の結果を受け、チャレンジャーの姿勢で、と思っていました。ただ、守りに入る気持ちがなくても、守る時間が多くなってしまった。向こうは勝つしかないので、圧力をかけてくるのは分かっていたんですが」

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