イ・ボミ「スマイル・キャンディ」が日本女子ゴルフ史に遺した功績 スポーツ紙の一面を何度も飾った希代の韓国人アスリート (3ページ目)

  • 金明昱●取材・文 text by Kim Myung-Wook
  • photo by Getty Images

 そうして、韓国に次いで日本にもファンクラブが誕生。年末には日韓両国でファンクラブ忘年会が開催され、イ・ボミ本人もどれだけ忙しくても必ず参加していた。

 AKB48のような「会いに行けるアイドル」ならぬ、「会いに行けるプロゴルファー」。それまでの日本女子ツアーでは見られなかった光景が各トーナメント会場で見られ、ファンサービスの在り方に一石を投じた選手でもあった。

 結局、人気爆発となった2015年シーズンは、トータル7勝を挙げて悲願の賞金女王の座に就いた。平均ストローク1位、メルセデス最優秀選手賞も受賞。年間獲得賞金は2億3049万円に上り、2001年の国内男子ツアーで伊澤利光が獲得した賞金額(2億1793万円)を更新し、男女を通じて日本ツアーでの最高獲得賞金額記録(当時)まで樹立した。

 翌2016年シーズンも、快進撃は続いた。年間5勝を挙げて、2年連続の賞金女王に輝いた。

 もはやこの頃は、外国人選手よりも日本人選手をメインに扱うスポーツ紙でさえ、イ・ボミを"韓国人選手扱い"することはなかった。過去、国内女子ツアーで韓国人選手が勝っても大きく取り上げられることはなかったが、イ・ボミはスポーツ紙の一面を何度となく飾った。韓国人アスリートでは、おそらく初めてのことだったのではないだろうか。

 頻繁にゴルフ雑誌の表紙も飾って、著書や写真集まで発売。外国人アスリートしては、かなり異例のことだった。

 とにかく、自分を支えてくれる人をとても大切にするイ・ボミ。スポンサー、メディアからもとても愛された選手だった。

 スポーツ選手にはいずれ坂を下る時がくるもので、イ・ボミも2017年シーズンのCAT Ladiesでの優勝を最後に勝利からは遠ざかっていった。長らくスイングとショットの不安定さに悩まされていた。そして、引退を決めた理由についても「成績が出ないままで、なかなかゴルフを楽しめなくなった」と、正直に語った。

 2019年12月に俳優のイワンさんと結婚し、現在34歳。「いずれ子どもがほしい」とも語っていたことを思えば、自らの家庭を築いていくことを、これからの人生の最優先と考えるのも当然のことかもしれない。

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