【ゴルフ】飛躍・鈴木愛には「一家の生活がかかっていた」 (3ページ目)

  • 古屋雅章●文 text by Furuya Masaaki
  • 小内慎司●撮影 photo by Kouchi Shinji

 迎えた17番、なんとバーディーを奪った。まさしく勝負のカギを握る一打、誰もが極度の緊張感を味わうであろう場面で、見事に3mのパットを沈め、勝負を決めた。その精神的な強さに、「バックナインに入ってからも、しっかりパーを拾っていた。終盤の落ち着いたプレイぶりもすごかった」と、試合を見守った協会関係者の多くが賛辞を送った。

 それから3週間後、鈴木は再び脚光を浴びた。またもメジャー大会の日本女子オープン(10月2日~5日/滋賀県)だった。3日目にトップに並んで「メジャー大会連勝か」と騒がれた。しかし、最終日にスコアを落として、5位に終わった。

「まだまだですね。ラウンド中に、イライラしているのがすぐに顔に出てしまって……」と、鈴木は反省の弁を述べたが、メジャー2大会連続のトップ10フィニッシュは立派。その後のトーナメントでも、コンスタントに上位争いに加わるようになって、ツアー2勝目を飾る日も決して遠くはないだろう。

 ところで、鈴木は、トッププレイヤーの横峯さくらとの類似点が多い。まずは、親が子どもたちをプロゴルファーにするために、生活のすべてを捧げてきたことだ。

 横峯の父・良郎氏は、家業をやめて、借金を背負いながらも自らの手でゴルフ練習場を建設。そこで、さくらを含め、3姉妹を育ててきたのは有名な話。3姉妹は良郎氏に、「プロゴルファーになって、親に1000万円返せ!」と日々叱咤され、プロを目指してがんばった。

 鈴木も同じような境遇にあった。徳島県生まれの彼女は、中学3年生のときに四国女子アマを制覇。その実績などが認められて、鳥取県の高校に特待生として入学したが、寮生活でストレスを抱えてしまった。そこで鈴木の両親は、三代続いてきた家業の材木屋を畳むことを決意。一家で鳥取県に引っ越した。

 その際、鈴木は両親から「愛がプロになって稼いでくれんかったら困る」と言われたという。

「親の言葉は、冗談ではなくて、わりと本気っぽかった(笑)。だから、『え~、なんで私が!?』って思ったことはありました」

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