2012.03.29

【男子ゴルフ】
石川遼が米ツアーで勝つために必要な『2つの決別』

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

アーノルド・パーマー招待では53位タイに終わった石川遼。マスターズ(4月5日~4月8日/オーガスタ)での奮闘を期待したい。米ツアー本格参戦で
飛距離の”亡霊”から解放される

 まもなく来季の米ツアーのシード権を獲得しそうな石川遼。本格参戦すれば、彼が得るメリットは計り知れない。ゴルフ以外のことで煩(わずら)わされる時間が減って、ゴルフに没頭できる環境が作れるだろう。練習も、マットの上からではなく、常に芝生の上からボールを打てる。外に買い物に出かけても、日本のように騒がれることなく、プライベートな時間も充実するだろう。そして、親とも必然的に距離を置くようになり、立派にひとり立ちしていくきっかけになるだろう。

 そして、そういったさまざまなメリットの中でも最大のものは、飛距離の”亡霊”と決別できることだ。

 石川はこれまで、アメリカのトーナメントに出場する度に、自分より何十ヤードも先まで飛ばす選手を何人も目の当たりにし、飛距離に対する憧れをずっと持ってきた。プロであれば、それは当然のことで、これまでも日本の選手は誰もが、世界レベルの飛距離を求めてきた。ゆえに、石川もいまだに100%以上の力で、体を目一杯使ったスイングを繰り返している。

 だが、シーズンを通して米ツアーで戦うようになれば、そんな石川の意識も変わってくるに違いない。というのも、一緒に戦う面々の体の作りや肉体の本質を知ることで、自分が求めているものが、非現実的なことだったと痛感させられるからだ。なおかつ、全力でクラブを振り回していたら、いつまで経ってもボールは曲がる。ドライバーの方向性が安定しなければ、結果を出せない状況も続く。そうなったときに、勝つためには何が大事なのか、ということに気づかされるはずだ。自らの武器、取り得の重要性を知り、その技術を磨いて出し切ることが、勝利への近道であることを認識するだろう。

 ただそこまでの過程は、一朝一夕のことではない。アメリカでも、ツアーに初めて参加する選手が先輩からこんなことを教わるという。「1年目でホテルを覚えろ。2年目でレストランを覚えろ。3年目にコースを覚えろ」と。つまり、アメリカの選手でさえツアーに慣れるまでに3年はかかるという話だ。日本の選手であればなおさら。アメリカの舞台で戦い続け、いろんな壁にぶち当たり、苦労を重ね、何年かのたうち回ってこそわかることだろう。

 いい例が、宮里藍である。彼女自身も最初は飛距離を求めてボロボロになった。けれども、苦しみながらプレイを続ける中で、アメリカで戦う術をつかんだ。それは、自分は何を磨けばこの場所で結果を出せるのか、ということに気づいた瞬間だった。彼女にとって、それはショートゲームだった。その精度を高め、きちんとゲームマネジメントができていれば、飛距離がなくても、結果を出せることを知った。だから今、彼女はアメリカでもトッププレイヤーのひとりとして活躍している。