【欧州サッカー】マンU史上最高のGKは誰か? ファン・デル・サールにあってシュマイケルにないもの (4ページ目)
【21世紀でも必ず重宝される】
「このチームは史上最強だ」
9シーズンぶりのCL制覇に胸を張るファーガソンのかたわらに、ファン・デル・サールの笑顔があった。マンチェスター・Uにおけるキャリアは公式戦266試合出場、プレミアリーグ4回、チャンピオンズリーグ1回、リーグカップ3回優勝。数々の栄光に彩られている。
さて、シュマイケルとファン・デル・サールは、どちらがマンチェスター・U史上最高のGKだろうか。
つい最近、イングランドのメディアはバルテズとデ・ヘアも加えてアンケート調査を行なっていたが、偉大なる先達に対してちょっと失礼な気もする。バルテズはイージーミスが散見し、デ・ヘアは先述したように守備範囲が狭かった。
筆者はファン・デル・サールに一票を投じる。シュマイケルの威圧感はすさまじく、彼が前に出てくると及び腰になるFWを何人も目撃した。しかし、この強気はチームメイトをもビビらせ、怒りをともなうコーチングによって少なからぬ若手が「豆腐メンタル」を発症した。
一方、ファン・デル・サールは穏やかだ。コーチングは丁寧で、ミスを受け入れる寛容さも持っていた。また、フィードの正確性でもシュマイケルを大きく上まわり、幾度となく攻撃の起点になっていた。この男こそがマンチェスター・U史上最高のGKであると筆者は思う。
2011年、ファン・デル・サールは「そろそろ家族のことを考えたい」として引退。翌年から古巣アヤックスのマーケティングディレクターやCEOを務めたのち、2023年5月に要職からも退いている。同年7月に患った脳出血の影響もあり、現在はフットボールの世界から少し離れている。健康面を踏まえると、現場には戻って来る公算は大きくない。
ただ、キックの精度や広い守備範囲など、現代サッカーのGKに必要とされるすべての要素をファン・デル・サールは有していた。バックパスをGKが手で扱うことを禁止された時代のはしりに、彼だけは悠然と、むしろ楽しそうにプレーしていた。
この長身のオランダ人GKは、21世紀でも必ず重宝される。
著者プロフィール

粕谷秀樹 (かすや・ひでき)
1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年
、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、 海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム 、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出 版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン 社)など多数。
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