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【欧州サッカー】マンU史上最高のGKは誰か? ファン・デル・サールにあってシュマイケルにないもの (2ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【19歳までアヤックスのFWだった】

 マンチェスター・Uにやってきたのは、2005年のことだった。アヤックスでプロデビューし、チャンピオンズリーグとUEFAカップ優勝に貢献。だが、ユベントスでは動体視力の低下が噂され、その後はフラム→マンチェスター・Uという特殊とも思えるルートをたどっている。

「選手寿命が長いGKとはいえ、ファン・デル・サールは35歳だ。すでにピークは過ぎているのではないか」

 クラブ内では厳しい意見が飛び交った。

「動体視力がなんだって? 35歳だからなんだっていうんだ? 彼のプレーを見てからモノを言え」

 周囲の雑音に対し、アレックス・ファーガソン監督が薄笑いを浮かべたのを鮮明に覚えている。

 スコットランドが産んだ名伯楽は、自らの眼力に絶対の自信を持っていた。デビッド・ベッカム、ライアン・ギグス、ポール・スコールズ、ウェイン・ルーニー、クリスティアーノ・ロナウドなど、多くの名選手を育てた「慧眼」に狂いはなかった。

 ファン・デル・サールは終わっていない。

 一つひとつのプレーは、実に正確だ。微(び)に入り細(さい)にわたるポジション修正を繰り返しているため、派手なセーブは必要ない。相手FWとの1対1でも腰砕けせず、ゴールエリアにへばりつくような臆病者でもなかった。

 さらに、屈強のストライカーが鬼のような形相でプレスをかけてきても、クールにかわす足技も身につけていた。

「アヤックスでは19歳までセンターフォワードだったからね」(ファン・デル・サール)

 ショートパスはもちろん、ミドル、ロングパスで攻撃の起点となりえたのは、オランダの名門クラブで培った能力だ。味方の足もとに配したり、相手DFラインの背後に落としたり、彼のキックはマンチェスター・Uのビルドアップに必要不可欠のアイテムだった。

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