【欧州サッカー】ファビオ・カンナヴァーロは身長176cmでも無双 涼しい顔で「1対1」「空中戦」を制した (4ページ目)
【地面にお尻がついたら負け】
マンツーマンディフェンスと少人数のカウンターを主武器とする戦術──いわゆるカテナチオが幅を利かせていた1970年代〜1980年代のイタリアには、クラウディオ・ジェンティーレというDFがいた。つかむ、踏む、引っかける、ひじを張る......挙げ句の果てには殴る。
相手を止めるためには手段を選ばず、メディアから「手斧師」のニックネームを頂戴するほどの荒くれ者だった。許されないプレーだとしても、彼はジーコやマラドーナを徹底的に潰し、デュエルの強さは圧巻とも表現できた。
さしずめカンナヴァーロは「クリーンな手斧師」である。176cmの小柄な肉体には驚異的なパワーとスピード、卓越した状況判断力が装備され、ファウルを冒す必要などほとんどなかった。
「DFは地面にお尻がついたら負けだと、厳しく教えられてきた」
筆者の古巣『ワールドサッカーダイジェスト』のインタビューで、彼はこう答えている。1対1で常に先手を取っていれば、最終手段のスライディングタックルを仕掛けたり、イエローカード覚悟で止めたりする必要はないということだ。
近ごろ、無駄なイエローカードが増えている。スライディングタックルも乱暴で、ボールだけをクリーンに奪い取る技術は見かけなくなった。
守備時における派手なアクションは、後手に回っているからこそのやむを得ないチャレンジだ。カンナヴァーロは涼しい顔で1対1を、空中戦を制した。フットボールを深く理解していれば、176cmの身長もハンデにはならない。
著者プロフィール
粕谷秀樹 (かすや・ひでき)
1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年
、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、 海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム 、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出 版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン 社)など多数。
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