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【欧州サッカー】ファビオ・カンナヴァーロは身長176cmでも無双 涼しい顔で「1対1」「空中戦」を制した (3ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【DF史上3人目のバロンドール】

 スキャンダルを引きずったまま、ドイツワールドカップが開幕した。イタリア代表はマルチェロ・リッピ監督の嫌疑が大会直前に晴れたばかりで、カンナヴァーロは事情聴取を受けたり、家宅捜査の対象になったり、騒動の余波も大きなプレッシャーとなってのしかかってきた。

 しかし、逆境は人を強くする。

 ラウンド16のオーストラリア戦は50分にマルコ・マテラッツィが一発レッド。ひとり少ないハンデを負うが、的確なポジショニング、打点の高いヘディング、熟練のラインコントロールで相手の猛攻をしのぎ、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれている。

 準々決勝のウクライナ戦はアンドリー・シェフチェンコを完封し、準決勝のドイツ戦ではミロスラフ・クローゼに1本のシュートも許さなかった。そして決勝のフランス戦も落ち着いて最終ラインを統率。イタリアを24年ぶり4回目のワールドカップに導いたヒーローこそが、カンナヴァーロだった。

 決勝でマテラッツィに一発レッドの頭突きを見舞ったにもかかわらず、大会のMVPはフランスのジダンだった。カンナヴァーロは全7試合にフル出場し、イエローカードすらもらっていない。やはり、守備者の評価は低いようだ。

 それでも、イタリア代表の名DFにはバロンドールとFIFA最優秀選手賞が贈られている。2006年のカンナヴァーロはもっと、そしてあらためて高く評価されてしかるべきだ。ダブルの個人賞受賞が実力の証(あかし)である。

 なお、DFでバロンドールを受賞したのは、フランツ・ベッケンバウアー(1972年・1976年/バイエルン)、マティアス・ザマー(1996年/ドルトムント)を含めてわずか3名。GKはレフ・ヤシン(1963年/ディナモ・モスクワ)ただひとりだ。カンナヴァーロとともにセリエAの守りがどれほど美しいか、長年にわたって証明してきたバレージ、マルディーニ、ネスタはかすりもしていない。

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