サッカー王国ブラジルに新監督アンチェロッティは何をもたらしたのか 復活の兆しと残る課題 (3ページ目)
【アンチェロッティを待ち受ける問題の数々】
それに対するアンチェロッティのアプローチは的確だった。「これは戦いだ!」「我らが血のために!」などという大袈裟な表現をする代わりに、まず何より、落ち着いた環境をもたらしたのだ。アンチェロッティはブラジル人の欠点をよく理解していた。
「ブラジルの選手は自分たちの代表チームに強い愛着を持っている。しかし時にはその愛がプレッシャーを生み出し、彼ら本来のプレーを妨げることとなる」(アンチェロッティ)
アンチェロッティの就任は、チームの心理面に変化をもたらすことができると私は思う。だが同時に、それだけでは不十分であるとも思う。なぜなら、ブラジル人というのは頭から足のつま先に至るまで感情に支配された生き物だからだ。そして感情をコントロールすることがうまくできないと、たちまちバランスを崩してしまうのだ。
2014年にブラジルが自国で開催したワールドカップを思い出してほしい。サッカー王国として優勝以外は許されないプレッシャーで、ブラジルは完全に自制心を失った。それがチーム史上最大の惨敗、1-7の悲劇を生んだ。相手のドイツがそれ以上ゴールするのをやめてくれなかったら、もっとひどい結果になっていたはずだ。
また、選手もいない。今のブラジルにはカフーやロベルト・カルロスのようなサイドバックはいない。公平な目で見ると、ブラジルの選手層は現在、アルゼンチン、スペイン、フランス、ポルトガルより劣っていると思う。今回の予選では、ブラジルは予選史上初めてベネズエラに勝つことができなかった。それも2度も。チームは凡庸で輝きもアイデンティティもない。
アンチェロッティなら競争力のあるチームを作り上げられるという期待は強いが、もうブラジルはかつてのような優勝候補の常連ではないのだ。
そして何よりも大きな疑問は、 アンチェロッティは、CBF(ブラジルサッカー連盟)のような複雑な組織下で完全な自主性を保てるのか、ということだ。
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