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クラブワールドカップ優勝賞金は180億円 批判は封じ込めたが開幕しても問題は山積...... (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【リバプールもバルセロナも出場しない】

 政治的な状況も問題を複雑にしていた。

 現在のアメリカでは移民政策を巡る抗議や緊張が続いており、絶対に安全とは言い難い。ロサンゼルスのような都市では、スタジアム周辺に大規模な警察の配置がなされている。さらに国際的な緊張、たとえばイスラエルとイランの対立もあって空気は不穏だ。

 そして猛暑。私がいるシアトルは涼しいが、多くの都市では気温がすでに30度を超しており、これは観客のみならず選手にとっても深刻な問題となる。パフォーマンスにも大きな影響を与えることだろう。

 その結果、多くの試合ではチケットが売れず、このままだとガラガラのスタジアムで試合をすることになる。情熱あふれる雰囲気など望めない。

 そのほかにも課題はある。たとえばピッチの状態。2024年にアメリカで行なわれたコパ・アメリカでも問題視されたが、今回も多くの選手と監督が不満を表明している。インテル・マイアミの監督であるハビエル・マスチェラーノは、ピッチの質の悪さを指摘している。

 参加チームを巡ってもひと悶着あった。メキシコのパチューカとレオンは実力で大会出場権を得たが、どちらも同じオーナー(ヘスス・マルティネス・パティーニョ)が所有するクラブだった。FIFAは「同オーナーのクラブが出場するのは利益相反にあたる」として、レオンの出場を拒否した(レオンはスポーツ仲裁裁判所に提訴)。

 これにより「どのクラブがレオンの代わりに出場するか」の争いが勃発した。最終的にはCONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)チャンピオンズリーグでレオンに次ぐ準優勝チームのロサンゼルスFCがプレーオフを経て出場権を得た。ただしこの決定には「実力だけがすべてではないのか?」という声が上がった。

 そもそも出場32チームを決める方法もパッとしなかった。FIFAは「過去4年間の成績に基づいて出場クラブを選ぶ」としたが、その結果、今シーズン各国で優勝したリバプールもバルセロナもナポリも出場しない。これが、クラブワールドカップの標榜する"世界一"の信頼度を霞ませ、UEFAが主催するチャンピオンズリーグの権威の影に隠れてしまった感がある。

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