モドリッチがレアル・マドリードを退団 天才しかいないチームで13シーズンもプレーできたのはなぜか (2ページ目)
【モドリッチとクロースの稀有な共存共栄】
モドリッチとクロースはいずれもチームの頭脳となるMFだった。
かつて、司令塔の共存は難しいとされていた。レアル・マドリードでのジジとディ・ステファノがそうだったし、1970年代イタリア代表でのジャンニ・リベラとサンドロ・マッツォーラ、西ドイツ代表のボルフガング・オベラートとギュンター・ネッツァーもしかり。共存は成功していない。
プスカシュとディ・ステファノが例外的にうまくいったのは、プスカシュがゴールゲッター寄りにプレーの比重を移し、プレーメーカー寄りになっていたディ・ステファノとのバランスをとったからだった。
モドリッチとクロースの場合、もっとシンプルな形で解決している。プレーエリアを左右で棲み分けていた。モドリッチが右側、クロースは左側。主な仕事場を分け、互いの領域を尊重してプレーした。ふたりが近づいて連係するより、離れて分業化したのはチームにとっても効率的だったと言える。
モドリッチとクロースではやや特徴が違う。モドリッチのほうがより前方でプレーするタイプで、クロースは後方から味方を動かす。どちらも左右でDFからボールを預かって前線につなげ、自らもフィニッシュに関わっていくのは同じなのだが、得意とする領域が少し違っていた。クロースが左の深い位置で関与し、そこから一気にサイドチェンジ。前進した右側でモドリッチが関わる。ふたりの特徴を発揮しやすい、うまい具合の組み合わせになっていた。
このふたりの背後を守備力の高いカゼミーロが預かる。モドリッチ、クロース、カゼミーロの関係性は完璧で、3人の緻密なコンビネーションというより関係性だけで抜群の安定感をもたらし、この3人がレアル・マドリードのエンジンになっていた。
スター選手を獲得してはバランスの構築に苦しむのは、もはやレアル・マドリードの伝統と言っていい。今季もキリアン・エムバペとヴィニシウス・ジュニオールのバランスが難しかった。その点でモドリッチとクロースは、例外的に何の問題もなく自然に共存共栄となった稀有な事例だったのかもしれない。
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