検索

久保建英、最終レアル・マドリード戦でも孤軍奮闘 その姿は来季、進むべき道を暗示

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)の久保建英は、世界に冠たるレアル・マドリードとサンティアゴ・ベルナベウでどう戦ったか?

 日本国内では、そうした話題が先行するのだろう。しかし、タイトルや欧州カップ戦への出場権、降格など何もかかっていない"消化試合"で、結果そのものへの関心は低かった。"お祭り色"が強かったと言えるだろう。

 レアル・マドリードのレジェンドと言えるルカ・モドリッチの退団が決まっており、試合前から万雷の拍手が送られていた。彼がコーナーキックを蹴るたび、声援が広がる。そして終盤、交代する時には両チームの選手が花道を作り、その栄誉をたたえた。試合中に花道を作るのは異例。そこにモドリッチの妻子も駆け寄り、彼自身も感極まっていた。なかでも、長年中盤でタッグを組んだトニ・クロースとの熱い抱擁は感動を誘った。

「モドリッチのラストゲーム」

 それが"試合の看板"と言える。ただ、久保がそのゲームで見せた姿は、今後の彼の行くべき道も暗示していた。

レアル・マドリード戦でレアル・ソシエダでの3季目を終えた久保建英 photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAレアル・マドリード戦でレアル・ソシエダでの3季目を終えた久保建英 photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAこの記事に関連する写真を見る 開幕前から、筆者はラ・レアルの補強がうまくいっていないことを強く指摘してきた。戦力が揃わなければ、100%の力は発揮できない。先日、イマノル・アルグアシル監督が「スビエタ組(下部組織出身者)で戦いたい」と洩らして炎上騒ぎになったが、過去3シーズン、獲得した選手で戦力になったのが、久保、ブライス・メンデス、ナイエフ・アゲルドだけではうんざりするだろう。

 ダビド・シルバの突然の引退は気の毒だったが、アレクサンダー・セルロート(アトレティコ・マドリード)、ミケル・メリーノ(アーセナル)の穴は大きかった。モハメド・アリ・チョ(ニース)、アルセン・ザハリャン、ルカ・スチッチ、ウマル・サディク、アンドレ・シルバ、オーリ・オスカールソン、シェラルド・ベッカーとことごとく期待外れ。右サイドバックもアマリ・トラオレ、ジョン・アランブル、アルバロ・オドリオソラに大金を投じるなら、アンドニ・ゴロサベル(アスレティック・ビルバオ)、アレックス・ソラ(ヘタフェ)で十分だった。

1 / 3

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

フォトギャラリーを見る

キーワード

このページのトップに戻る