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クロード・マケレレの守備は唯一無二 レアル離脱にジダンも「なぜ手放すのか理解できない」と嘆いた (2ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【銀河系はマケレレ離脱とともに崩壊】

「なぜクロードを手放すのか、俺には理解できない」

 マケレレがレアル・マドリードからチェルシーに移籍した時、滅多に感情をあらわにしないジネディーヌ・ジダンが公(おおやけ)の席で不満を口にするほどだった。

 2000年代初頭、レアル・マドリードの乱獲が始まった。宿敵バルセロナとの間で依然として大きなしこりを残すルイス・フィーゴの引き抜きを皮切りに、ジダン、ロナウド、デビッド・ベッカム......。こうしたスーパースターに既存のラウル・ゴンサレス、フェルナンド・モリエンテスまで含まれる陣容は、まさしく「銀河系」だった。

 しかし、この銀河系軍団は重心が前にかかりすぎている。相手ボールになった際のリアクションは、誰もが気まぐれだった。バランスは最悪で、サッカーの常識としてはありえない構成だ。

 この窮状をひとりで支えていたのが、マケレレである。

 小柄で敏捷(びんしょう)、なおかつ運動量豊富であり、技術的にも対人能力も申し分なかった彼は、守りに興味を示さない男たちのわがままをクールにコントロールしていた。

 特に左サイドである。ジダンは勝手気ままに動き回る。ロベルト・カルロスは「戦局など知ったことか」と上がってくる。広大なスペースができる。

 ここにマケレレが現れるのだ。

 ピンチの芽を未然に摘むとともに、攻め残っていた者に的確なパスまで配する。銀河系とは絢爛豪華なアタッカーではなく、マケレレこそが主軸であったことは、衆目の一致するところだ。

 ただし、フロレンティーノ・ペレス会長はわかっていなかった。もともと守備者を軽視する傾向にあり、マケレレが自らの仕事に見合う額の年俸を要求すると直ちに却下。チェルシーに手放したのである。

 この人事が、先述したジダンの発言──なぜクロードを手放すのか、俺には理解できない──につながる。

 マケレレが入団した2000年以降の3シーズンで、レアル・マドリードはラ・リーガを2度、チャンピオンズリーグを1度制した。彼が退団した2003年以降、タイトルを再び獲得するまで3年を要している。

 銀河系は、マケレレ離脱とともに崩壊した。

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