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マラドーナ、メッシ、そして...前教皇フランシスコが故郷アルゼンチンで愛される理由 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【「サッカーは多くのことを教えてくれる」】

 彼がサッカーを愛していたのは、「ゴール!」と叫ぶためだけではない。彼はサッカーを"精神的に大事なもの"だとして、それについて何度も言及していた。

「サッカーは喜びであり、仲間とプレーするもの。このスポーツへの愛は、ともにプレーして初めて感じられるものだ」

 だからこそ彼はサッカーをバチカンに持ち込んだ。ディエゴ・マラドーナやリオネル・メッシ、フランチェスコ・トッティ、サミュエル・エトー、ロナウジーニョ、ジャンルイジ・ブッフォンといった選手たちとともに「平和のための試合」をローマで3回開催。のべ150人以上のサッカー界のレジェンドたちが集結した。

 また「ヒンチャ・デ・ロス・ポブレス」(「貧しい人々のサポーター」)という運動を支援しており、ブエノスアイレスの貧しい地区で子どもたち向けの無料のサッカー試合なども主催した。

 フランシスコはサッカーを「善の力」と見なしていた。彼が在任中に残した数々の言葉からもそれはうかがえる。2014年、サン・ロレンソがクラブ史上初めてリベルタドーレス杯に優勝した際には、チームを祝福し、その際こう述べている。

「サッカーは政治やお金よりも人々を結びつける力がある」

 2015年、フランシスコはアルゼンチンの記者団に、自身が執筆した『Futbol y Fe』(「サッカーと信仰」)という本を贈った。この本はチームワーク、謙虚さ、献身といったサッカーの特性について語り、これらがキリスト教の信仰と似ていると説明している。

「サッカーは説教よりも多くのことを教えてくれる」

 2019年にイタリアの若者とアスリートに向けた演説では、こう言っていた。

「サッカーはチームスポーツ。ひとりで楽しむことはできない。共有すれば、幸せは倍になる。そうやって生きれば、自己中心が蔓延する社会において、良い影響を与えることができる」

 フランシスコに近しかったアルゼンチンの元神父は次のように語っている。

「フランシスコは、サッカーが社会から見捨てられた人々にも尊厳を与えると信じていた」

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