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【プレミアリーグ】遠藤航が「陰のMVP」と言われる理由 リバプール主将、OBが「特別な存在」と大絶賛 (3ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【ファン・ダイクも残留を熱望】

 25節のウルヴァーハンプトン・ワンダラーズ戦は、前半を1-0で折り返しながら、後半になってシュートを撃てなくなった。この非常事態に投入されたのが、ベンチの遠藤だった。

 残り20分、一気呵成に攻め立てるウルヴズを力強いデュエルと巧妙なポジショニングで難なく鎮圧し、プレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)に選ばれる。攻撃側のスーパーサブがPOMに輝くケースは時折あるが、守備者がわずか20分で最高評価を得た事例はほとんどない。

 任務遂行に努力を惜しまない彼の姿勢は、ピッチ上でもよく表れている。

 ボールを奪うまで繰り返し、繰り返し、しつこすぎるほどチャレンジする。相手をサイドに追いやり、ボールをキープする姿勢が変わった瞬間にタックル。身長で20cm以上も上回る巨漢FWとの空中戦では体をぶつけて自由を奪い、セカンドボールへの反応は誰よりも素早く、鋭い。

 身を粉にして闘う遠藤の姿は美しく、彼がボールを奪った時、空中戦で競り勝った時に、本拠アンフィールドは万雷の拍手に包まれる。リバプールのサポーターが遠藤を愛し、必要としている何よりの証(あかし)だ。

「ワタ(遠藤の愛称)はこの先、何年も、何年もリバプールにいてくれるだろうな。俺がキャプテンだけど、このクラブには頼りになるリーダーがほかにも数人いる。そのひとりがワタなんだ」

 フィルジル・ファン・ダイクが、こう高く評価したように、遠藤は自分が生き残るために何をすべきか、自分の役割とは何か、自ら模範を示し、リバプール全体の見本となった。

 不慣れなサイドバックでも、センターバックでも、スロット監督の期待に十分すぎるほど応えた。特別な存在で、陰のMVPであることは、ファン・ダイクのコメントからもうかがい知れる。

 さすが、と言うしかない。

著者プロフィール

  • 粕谷秀樹

    粕谷秀樹 (かすや・ひでき)

    1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン社)など多数。

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