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アルバロ・レコバにみんな憧れた 「マラドーナやメッシと並び称される存在」と同僚サネッティが断言 (2ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【セリエAデビュー戦で衝撃のゴール】

「戦術に縛られて、選手には自由がなかった。もっと俺たちに任せてくれれば、二度や三度はセリエAでも優勝していたよ」

 レコバ本人が当時を振り返る。

 カルチョ・イタリアーノの愛好者は、老いも若きも戦略・戦術に口うるさい。ボードを使い、勝因と敗因を延々と分析するTVショーも存在した。そのなかでもインテルは「ロナウドが戦術」とメディアに揶揄され、ルイジ・シモーニ監督は「無知」と罵られもした。失礼な話である。

「俺たちと同じレベルでボールを蹴ったこともない連中が、ひたすら戯言(ざれごと)を繰り返す無駄な時間」

 レコバは戦略・戦術のTVショーを嫌ったが、彼は左サイドで気ままに振る舞うことが多かった。相手ボールになった際のリアクションが重視される近代フットボールでは、おそらく失格の烙印を押される。

 パスコースを限定するわけではなく、ボールホルダーも追わない。ディフェンダーからすると迷惑千万だ。インテルのチームメイトであり、現在は同クラブの副会長を務めるハビエル・サネッティも次のように語っている。

「戦略・戦術を理解しようとはしていなかった。でも、ボールを持った際のアイデアはピカイチ。ディエゴ・マラドーナやリオネル・メッシと並び称される存在、と断言できる」

 たしかにレコバは特別だった。

 1997-98シーズンの開幕節(対ブレッシャ)だった。インテリスタは、いや、世界中がロナウドに注目していた。バルセロナからやってきたブラジルのモンスターに、ありとあらゆる期待が集中する。レコバはベンチから戦況を見守っていた。

 0‐1で迎えた79分、ウルグアイ人FWの出番が訪れた。ハーフウェイラインから20メートルほどボローニャ陣に入ったところで、レコバはルックアップしてボールをキープする。味方の立ち位置でも確認していたのだろうか。

 次の瞬間、彼は「ボールの行き先なんぞ知ったこっちゃない」と言わんばかりに、左足を無造作に降り抜いた。およそ30メートルの長距離砲がうなりをあげてネットに突き刺さった。

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