検索

スティーヴン・ジェラードは「生涯リバプールLOVE」 優勝請負人モウリーニョの求愛オファーも断り続けた (2ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【度肝を抜く20メートルのミドル弾】

 四半世紀ほど前のリバプールは辛酸をなめていた。マンチェスター・ユナイテッドの天下が続き、2000-01シーズンのカップトレブル(FAカップ、リーグカップ、UEFAカップ)も、リバプールの伝統と格式を踏まれれば溜飲を下げたとは表現できない。ビッグ4の位置づけもマンチェスター・U、アーセナル、チェルシーに次ぐ4番手。プライドが傷つき、自信が揺らぐ。

「やっぱり4番手は癪(かん)にさわったよ。だからこそ、自信を取り戻せたあのシーズンは、俺たちリバプールにとってはターニングポイントになった」

 引退後のジェラードが2004-05シーズンの重要度を語っている。そう、後世に語り継がれる 「イスタンブールの奇跡」だ。

 奇跡の予兆は、チャンピオンズリーグ・グループステージ最終節にあった。ベスト8進出の条件は2点差以上の勝利だったが、オリンピアコスのリバウドに先制を許した。本拠アンフィールドでも3ゴールは厳しいか。いや、リバウドの1点はドラマの呼び水でしかなかった。

 後半開始早々、フロラン・シナマ=ポンゴルが決めた。76分、ニール・メラーが押し込んだ。逆転したとはいえ、このままではグループステージで撤退を余儀なくされる。残り4分。時間がない。

 その時、ジェラードの右足がうなった。

 およそ20メートルの一撃は、彼ならではの弾丸ミドル!

「なんなんだ、こいつーーーっ」

 この一戦をテレビで解説した筆者が奇声を挙げるすさまじさだった。

 決勝トーナメントに進出したリバプールは、曲者レバークーゼン、優勝候補のユベントス、チェルシーを連破して決勝進出する。

 しかし、決勝の地イスタンブールでは3点のビハインドを背負い、ハームタイムを迎える。大舞台で3点差を覆せる可能性は絶望的までに低い。しかも相手は百戦錬磨のミランだ。リバプールがあきらめていたとしても不思議ではなかったのだが......。

2 / 4

キーワード

このページのトップに戻る