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【プレミアリーグ】シティ&ユナイテッドのダブル不振でマンチェスター市の「サッカー観光」産業が崩壊中 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【オールドトラフォードの劣化】

 彼らはクラブで長年働き、各部門でチームを支えてきた人々だ。スカウト、医療、管理部門、ユース育成などのスタッフを、コスト削減のために解雇された。なぜユナイテッドは自ら首を絞めるようなことをするのかと、誰もが疑問に思っている。

 オールドトラフォードの劣化は、こうしたユナイテッドの問題を象徴している。サンチャゴ・ベルナベウやサンシーロとともにサッカーの殿堂として名を馳せ、数々の名勝負の舞台となってきたスタジアムも、コストとスタッフの削減により、ろくにメンテナンスもできていない状況で放置されている。

 スタンドではあちこちで雨漏りし、先日のプレミアリーグ第27節イプスウィッチ戦では、ネズミがピッチに侵入するという事件が起こった。2024年12月の保健省の検査では、少なくともスタジアムの12カ所でネズミのフンが発見されており、いくつかのバーやレストランは閉鎖された。

 この街のもうひとつのチーム、マンチェスター・シティはかつて、常にユナイテッドの後塵を拝してきたが、2008年のアブダビのシェイク・マンスールによる買収以降、世界最強のクラブとして君臨していた。しかしそのシティも、今、厳しい現実を目の当たりにしている。

チャンピオンズリーグで敗退が決まり浮かない表情のジョゼップ・グアルディオラ監督(マンチェスター・シティ) photo by Reuters/AFLOチャンピオンズリーグで敗退が決まり浮かない表情のジョゼップ・グアルディオラ監督(マンチェスター・シティ) photo by Reuters/AFLOこの記事に関連する写真を見る ユナイテッドの危機とはまた種類が異なるが、同様に深刻だ。シティはいま、2009年から2018年にかけての財政上の違反の疑いで告発されている。その数なんと115件。もしこれらの違反が確定すれば、政府やプレミアリーグからクラブに対し、厳しい処分が科せられると言われている。

 想定される罰則は、リーグ戦での減点、罰金、移籍禁止、選手の数カ月間の出場禁止。最悪の場合は降格もありうる。

 こうした内政の不安定さから、今シーズンのシティの成績は見る影もない。プレミアリーグを制し、世界王者に輝いてから1年ちょっと経った現在、来シーズンのCL出場権も危うくなっている。

 新加入の選手はジョゼップ・グアルディオラのシステムに適応するのに真剣に苦しんでいる。何よりロドリのケガによる欠場、そしてケヴィン・デ・ブライネの度重なる負傷によるパフォーマンスの劣化をカバーできる選手がいない。

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