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三笘薫も久保建英も眼中なし 144億円積んでも袖にされた金満サウジ移籍のブーム終焉も近い (2ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【オスカルは全盛期に中国へ電撃移籍】

 久保の現状でSPLを選択するのは、愚の骨頂だ。憶測の域を出ていないとはいえ、レアル・マドリード、バルセロナ、アーセナル、リバプールなどが興味津々という。チャンピオンズリーグでも優勝を狙える強豪との交渉を優先するのが、アスリートの常識といって差し支えない。

 ただ、三笘や久保がSPLを拒否する一方で、レベルの低いリーグを甘受した名手もいる。2016年、チェルシーから中国の上海上港に移籍したオスカルだ。ブラジル代表の屋台骨を支えると高く評価されたMFは、26歳の時に世界チャンピオンの夢を捨てた。

「最悪の選択」「カネに目がくらんだ」「裏切り者」など、当時多くの批判が投げつけられた。かく言う筆者も「もったいないなぁ。中国はないよなぁ」と首を傾げていた。

「家族どころか、一族の生活もかかっている」

 オスカルの発言にゾッとした。"一族"とはエージェントやスポンサー、さらに彼らの家族まで含んでいた。自らの夢をあきらめ、彼の仕事にたずさわるすべての人の生活を背負う覚悟を決めていたのである。なお、オスカルは中国で8年を過ごし、およそ300億円を稼いだという。

 SPLが提示する天文学的な数字に、心が揺らぐ者も現れるに違いない。ファイナンシャル・フェアプレー(※)に苦しみ、なおかつ大企業のバックアップも期待できないようなクラブが、カネになる選手を差しだすことも考えられる。

 今冬、21歳のコロンビア代表MFジョン・デュランがアストン・ヴィラからアル・ナスルに移籍した。それはプレミアリーグの名門が抱えていた経済的不安を軽減するためだった。

※ファイナンシャル・フェアプレー=UEFAが2011年にクラブ財政健全化のために定めた規則で、支出が収入を上回ってはいけないとする。支出は移籍金や選手報酬など、収入はスポンサー収入やテレビ放映権、大会賞金、スタジアム入場料などを指す。

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