デンベレ(PSG)のドリブルは極めて異質で独特 松井大輔が分析「左右どちらでもシュートを打てる両利きのアドバンテージ」
【新連載】
松井大輔「稀代のドリブラー完全解剖」
第4回:ウスマン・デンベレ
今シーズンのリーグ・アンで16得点を記録し、第21節終了時点で得点ランキングのトップに立っているのが、パリ・サンジェルマン(PSG)のフランス代表FWウスマン・デンベレだ。
デンベレと言えば、これまではドリブル突破を最大の武器とする典型的なウインガーと見られていたが、今シーズンは昨年12月から急激に得点力が増しており、もはや鬼に金棒。27歳にして、手がつけられない危険なアタッカーに進化を遂げた印象だ。
今季のデンベレはさらに危険なアタッカーに進化した photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る ただ、得点力を増したとはいえ、デンベレのドリブルは相変わらずのハイクオリティ。特に主戦場のサイドでプレーする時は、その武器が冴えわたる。
果たして、デンベレの原点とも言えるドリブル突破には、どんなテクニックが隠されているのか。現在横浜FCフットボールアカデミーサッカースクールのコーチとして『対人強化クラス』を担当する元日本代表の松井大輔氏が解説してくれた。
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「まず、デンベレのドリブル突破の前提になっているのが、傑出したスピードです。しかも初速が速く、ドリブルする時のファーストタッチから急にスピードアップするので、スピードに乗ったら対峙するDFがついていくのは難しいと思います。
相手の背後に大きなスペースがある時などは、そこにボールを大きく蹴ってから、相手と競争するだけで突破できる。デンベレは、スピードという自分の武器を最大限に生かすためのドリブルをしているわけです。
一般的に、スピードに乗った状態でドリブルをすると、どうしてもボールコントロールが乱れがちです。でも、デンベレが優れているのは、スピードに乗った状態でもしっかり自分がコントロールできる範囲内にボールを置き続けられることです。
普通の選手の感覚からすると、ボール1個か2個分、自分から離れた場所にボールがあるので、相手に奪われてしまいそうに見えます。しかし、デンベレは奪われない。それが最適なドリブルの範囲になっていて、そのなかでスピードに乗ってドリブルを続けられるボールテクニックもある。
つまり、スピードと、ボールを扱う正確な技術の両方を備えているからこそ、成り立っているドリブルと言えるでしょう。スピードのある選手で、このレベルのドリブルをできる選手はなかなか存在しません」
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著者プロフィール
中山 淳 (なかやま・あつし)
1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)