デンベレ(PSG)のドリブルは極めて異質で独特 松井大輔が分析「左右どちらでもシュートを打てる両利きのアドバンテージ」 (3ページ目)
【デンベレは両利きの先駆者】
たとえば、右利きの選手の場合、ドリブルで相手を抜いた直後にシュートを打とうとすると、右方向に抜いた場合は即シュートできますが、左に抜いた場合は効き足ではない左足でシュートを打つか、少しタイミングを遅らせてでも右足に持ち替えてシュートするかのどちらかになります。でも、ゴール前はゼロコンマの世界なので、少しでもタイミングがずれると相手にブロックされたりして、シュートを決めるのが難しくなってしまいます。
それに対して、デンベレの場合はどちらに抜いても即シュートを打てる。これまではそのシュート精度に課題を抱えていましたが、最近はその精度がアップしたことで、ますますゴール前で相手に脅威を与えられる選手になっています」
近年は、両足を同じレベルで使える、いわゆる「両利き」の選手が増えてきた。デンベレの所属するリーグ・アンだけを見ても、リヨンのラヤン・シェルキ、この冬にパリ・サンジェルマンに加入したフヴィチャ・クヴァラツヘリアなどがよく知られるが、約10年前にレンヌでトップデビューしたデンベレはその先駆者と言える。
では、意図的に両利きの選手のドリブラーを育てることは可能なのか──。指導者としての視点で、松井氏に語ってもらった。
「可能だと思います。自分も少年時代に右足をケガした時、左足だけでリフティングやドリブルやキックをしていたことがありました。基本的に僕は右利きですが、その経験があったので、どちらの足も使えるようになれましたし、左サイドでも右サイドでも違和感なくプレーできたのだと思います。
その実体験もあり、現在はスクールでも子どもたちに、左右両足でドリブルをする練習メニューを実践しています。もちろん吸収力はそれぞれですが、子どものうちから両足を使う習慣を身につけることで、デンベレのような両利きを目指す基礎づくりができると思います」
日本ではまだ両利きの選手はあまり存在しないが、将来的にはデンベレのようなドリブラーが誕生することを期待したい。
(第5回につづく)
【profile】
松井大輔(まつい・だいすけ)
1981年5月11日生まれ、京都府京都市出身。2000年に鹿児島実業高から京都パープルサンガ(現・京都サンガF.C.)に加入。その後、ル・マン→サンテティエンヌ→グルノーブル→トム・トムスク→グルノーブル→ディジョン→スラヴィア・ソフィア→レヒア・グダニスク→ジュビロ磐田→オドラ・オポーレ→横浜FC→サイゴンFC→Y.S.C.C.横浜でプレーし、2024年2月に現役引退を発表。現在はFリーグ理事長、横浜FCスクールコーチ、浦和レッズアカデミーロールモデルコーチを務めている。日本代表31試合1得点。2004年アテネ五輪、2010年南アフリカW杯出場。ポジション=MF。身長175cm、体重66kg。
著者プロフィール
中山 淳 (なかやま・あつし)
1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)
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