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レアル・マドリード恐るべし! キリアン・エムバペがついに機能し始めた (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【9番の足枷】

 クレールフォンテーヌ(フランスの国立養成所)のころから有名だった。モナコでプロデビューし、パリ・サンジェルマンを経てレアル・マドリードに移籍したのが今季。数年前から移籍の噂があり、ようやく実現した。

 昨季のCL王者のレアル・マドリードは、エムバペ獲得でチームの再構築を迫られている。すでにヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ、ジュード・ベリンガムがいるところにエムバペが加わり、一方で司令塔だったトニ・クロースが引退。単純な差し引きで言えば、プレーメーカーの穴をストライカーで埋めるという、実にこのクラブらしい課題に直面したわけだ。

 エムバペには背番号9が与えられている。かつてはアルフレッド・ディ・ステファノが着けたこのクラブのエースナンバーだが、これがそもそもの勘違いと言えるかもしれない。

 エムバペはパリ・サンジェルマン、フランス代表で典型的な9番(センタフォワード/CF)としてはプレーしていなかった。CFに起用されることはあったが、得意なのは左ウイングなのだ。あるいはクリスティアーノ・ロナウドと同じで、左サイドにいるストライカーなのだ。

 もちろんレアル・マドリードはエムバペのプレースタイルを知り尽くしていたと思うが、左サイドにはすでにヴィニシウスがいる。ロドリゴはもっぱら右サイドでプレーしていたが、実はこちらも左のほうが得意。ベリンガムもどちらかと言えば左寄りで、もともと左サイドが得意なアタッカーが3人いるところにエムバペが加わったわけだ。

 エムバペの最大の武器は、圧倒的なスプリント能力である。走るエムバペを止めるのはまず不可能だ。ところが、CFに置かれたことでその驚異的な能力を半ば封印される格好になってしまった。CFとしての能力を身に着けてきたヴィニシウスとポジションの入れ替えもやっていたが、結局どちらも少し不自由になってしまった。

 エムバペとヴィニシウスのプレーエリアの重複はベリンガムのプレーエリアを不確定にさせ、さらに守備への切り替えにも問題が生じていた。この手の問題の調整にかけては定評のあるカルロ・アンチェロッティ監督をもってしても、解決できていなかった。

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