検索

久保建英のムダ遣いをいかに防ぐか ELプレーオフ進出のソシエダが強いられるギリギリの戦い (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【欧州のタイトルを狙うには厳しい戦力】

 オランダは伝統的にウイング、サイドアタッカーの宝庫である。アヤックスはその急先鋒と言える。欧州の覇権を握った当時の隆盛こそないが、そこまで久保に手も足も出なかったのは衝撃だっただろう。補足すれば、そのアヤックスの伝統をバルセロナに持ち込んだのが、"空飛ぶオランダ人"ヨハン・クライフであり、久保はバルサの下部組織であるラ・マシアで育っているのだ。

 久保のコンディションさえよかったら、ELで止められるディフェンダーはいない。言い換えれば、彼の力を削ることなく、ムダ遣いをしなかったら、いつでもゲームを動かせる。それは勝敗を左右することになるはずだ。

 今シーズン、ラ・レアルを率いるイマノル・アルグアシル監督は、久保をベンチに置くたびに批判を受けている。特に日本国内では、そうした報道が加熱気味と言える。しかし、久保というリソースは有限で、一定のラインを越えてしまったら、パフォーマンスは間違いなく落ちるし、最悪の場合、ケガにもつながってしまうのだ。

 たとえ久保本人がプレーを望もうとも、ムダ遣いは避けるべきだろう。

 欧州でタイトルを取るためには、11人の主力では不可能と言える。控え組の選手もバックアップとなって、"ラッキーボーイ"になれるようでないと、戦況は厳しくなる。疲労が積み重なるだけでなく、対戦相手に研究され、対策も立てられてしまうからだ。

 その点で、1.5軍で勝利したPAOK戦は、ひとつの試金石になるかもしれない。

 それはよくも悪くも、バスクのクラブの伝統を生かした戦い方だった。右サイドに右利きのシェラルド・ベッカーを配置。彼がクロスを送る戦法で、長身で高さを武器にするオーリ・オスカールソンが頭で2ゴールを決めた。クラシックで単純な戦い方について、「これだけで勝ち上がれる時代ではない」というのは正論だが、ひとつのパターンと言えるだろう。

 ベッカーもオスカールソンも、高いレベルでは、まだまだ限定的な起用法になる選手だが、アルグアシル監督が諦めずに彼らの使いどころを苦心して探してきたことが功を奏しつつある。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る