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プレミアリーグの日本代表選手をイギリス人記者が分析 鎌田大地、遠藤航、菅原由勢の現地評は? (3ページ目)

  • ジョン・ブルーウィン●取材・文 text by John Brewin

【明るい性格とスキルでファンのお気に入りに】

菅原由勢(24歳)/サウサンプトン(前半戦順位:20位) 
プレミアリーグ前半戦評価:C(AからEの5段階)

 サウサンプトンは実に困難なシーズンを送っている。開幕からひとつの引き分けを挟んで8連敗し、第10節のホームでのエバートン戦でなんとか初白星(1-0の勝利)を掴んだものの、その後も状況は好転せず、12月にラッセル・マーティン監督が解任された。長らく最下位に沈んでいるチームの降格は不可避だろう。

 そんな厳しいクラブでも、菅原由勢は持ち前の明るい性格とフットボールスキルで、ファンのお気に入りになった。マーティン前監督もこの日本代表サイドバックに好感を抱いており、在任中の10月にこう話している。

「彼はすばらしい人間性をもって、異なる文化と環境にすんなり順応している。特に最初の2カ月ほどは、家族がまだ来ていなかったが、問題はなさそうだった。今は家族と一緒なので、笑顔が増えている。いずれにせよ、ユキはよく笑うけどね」

 昨季のチャンピオンシップで、ショートパスを主体としたポゼッションスタイルを築いたチームに問題なく適応できたのは、知性と技術の賜物だろう。開幕から先発を飾り、第3節ブレントフォード戦では初得点を記録――逆足のアウトサイドを巧みに合わせた美しいハーフボレーだった。第8節レスター戦で負傷し、次節のマンチェスター・シティ戦を欠場したが、翌10節のエバートン戦では途中出場から決勝点をアシストしている。

 菅原は英語も堪能で、地元レポーターとよく話しており、新監督のイヴァン・ユリッチの指導や哲学について、こんなふうに明かしている。

「新監督はよりアグレッシブな攻撃を好みます。前監督はボールを奪ったら、キープすることを第一義としていたけど、今は違います。練習でも、ボールを奪った後にバックパスすると、『ノー! 前方のパスコースを探し、相手ゴールに近づくんだ!』と叱られます」

 その高いスキルを考慮すれば、前監督のスタイルのほうが合っていたかもしれないが、適応能力も備える彼なら今のチームにも居場所を見つけるのではないか。後半戦の活躍次第では、別のクラブから声がかかり、個人的にプレミアリーグに残留できるかもしれない。

(井川洋一●翻訳 translation by Igawa Yoichi)

ジョン・ブルーウィン 
John Brewin/1976年生まれ。英国マンチェスター出身のスポーツジャーナリスト。『ESPN』のシニアエディターを経て、現在は主に『ガーディアン』で健筆を揮う。同紙のポッドキャスト『フットボールウィークリー』やラジオ『トークスポート』にも頻繁に出演している。

著者プロフィール

  • 井川洋一

    井川洋一 (いがわ・よういち)

    スポーツライター、編集者、翻訳者、コーディネーター。学生時代にニューヨークで写真を学び、現地の情報誌でキャリアを歩み始める。帰国後、『サッカーダイジェスト』で記者兼編集者を務める間に英『PA Sport』通信から誘われ、香港へ転職。『UEFA.com日本語版』の編集責任者を7年間務めた。欧州や南米、アフリカなど世界中に幅広いネットワークを持ち、現在は様々なメディアに寄稿する。1978年、福岡県生まれ。

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