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セリエAアタランタのエース、ルックマン アフリカ年間最優秀選手の絶対的なプレーがすごい

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

西部謙司が考察 サッカースターのセオリー 
第29回 アデモラ・ルックマン

 日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。

 今回はセリエAのアタランタで活躍する、ナイジェリア代表のアデモラ・ルックマン。左45度からフィニッシュに持ち込むプレーは無双。今年のアフリカ年間最優秀選手賞を受賞しました。

【ゾーンを持つ男】

 アデモラ・ルックマンは自分の形を持っている。左45度あたりで前向きに仕掛ける時は絶対的。それが存分に発揮されたのが2023-24シーズンのヨーロッパリーグ(EL)決勝だった。

アタランタで活躍するナイジェリア代表のルックマン photo by Getty Imagesアタランタで活躍するナイジェリア代表のルックマン photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る このシーズン無敗だったレバークーゼンを、ルックマンのハットトリックで粉砕。ロークロスに合わせた1点目の後、左からカットインして右足でファーサイドへ叩き込んで2点目。3点目も同じような場所からシザースで縦に外して左足。

 かつてアレサンドロ・デル・ピエロが同様の場所からのシュートを得意としていて、「デル・ピエロ・ゾーン」と呼ばれた。ティエリ・アンリもこのアングルのシュートが十八番だったが、現在はルックマンのゾーンになっている。

 アタランタはセリエA第18節終了時点で首位。2016年にジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督が就任して以来、上位をキープしてきた。イタリアではプロビンチャと言われる中小規模クラブながら、名選手や名監督を輩出してきた。ガスペリーニ監督は機能的な組織プレーを植えつけ、以来安定した戦績を残してきたが今季は優勝のチャンス到来となっている。

 今季すでに9ゴールのルックマンが絶対的なエースだ。

 174㎝と大きな選手ではないがガッチリとした体格。足下へボールが入ればほとんど失わない。今や「ルックマン・ゾーン」となっている左45度からのカットインからは、ニアにもファーにも正確でパワフルなシュートを打ち分ける。DFがシュートブロックしようと足を伸ばしてくれば、足の間を通すシュートも得意。

 懐の深い持ち方からの右足アウトの切り返しにキレがあり、右への持ち出し方も多彩。右足アウトで触った直後、足をほぼ着地させずに鋭く持ち出す形は、わかっていても止められない感じである。シュートコースさえ空ければ、素早い振りの一撃をお見舞いする。

 カットインだけでなく縦への持ち出しもあるので、対峙する相手は非常に止めにくい。EL決勝でも見せた右足のシザースで縦へ抜く形も得意で、この縦突破かカットインかを対峙するDFの体勢を見て決めているから、ほとんど失敗がない。

 わかっていても止められないドリブルを2つ持っていて、相手がどちらかに絞るとなおさら反対は止められなくなる。守備側にしてみれば、このエリアでプレーさせないことが唯一の対処法かもしれない。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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