マンチェスター・ユナイテッドの本拠地は「夢の劇場」こと「オールド・トラフォード」~欧州スタジアムガイド~ (3ページ目)
またメインスタンドの両端には、マット・バスビー像だけでなく「ミュンヘンの悲劇」を悼むものとして、時計(クロック)と記念碑(プラーク)が備え付けられている。この悲劇は、1958年2月6日に起きた飛行機墜落事故のこと。この事故で44名中23人が亡くなったのだが、その23人のうち15人がユナイテッドの関係者であり、内8人が選手だった。ミュンヘンの悲劇の生き残りの中には、バスビー監督だけでなくチャールトンなどもいた。
1978年のクラブ創設100周年に、チャールトンはこう言った。「オールド・トラフォードにすごい愛着を持っている。私は多くの血と涙をこの場所で流してきた。私が初めて来たときとはものすごく変わった。妬まないクラブがないほどに。政治的な争いなどは関係なく、ここにいる選手やファン、関係者すべての人はチームであり、そういった人のすべての生活はオールド・トラフォードとともにある。そして、終わらないストーリーの一部であり、夢の劇場だ!(They are a part of a never ending story. They are a Theatre of Dreams!)」。この台詞がオールド・トラフォードの別称「夢の劇場」の由来となった。
2012年のロンドンオリンピックの会場にもなったが、2028年の欧州選手権の会場には残念ながら選出されなかった。輝かしい歴史に彩られたオールド・トラフォードだが、2012―13シーズン以来、10シーズン以上リーグ優勝から遠ざかっている。昨季は2015―16シーズン以来のFA杯優勝を果たしたが、リーグ戦では残念ながら8位に終わっている。
2022年から指揮を執っていたオランダ人のエリック・テン・ハフ監督が今季途中で退任。10月28 日からは元ユナイテッドの選手でオランダ代表としても活躍したアシスタントコーチのルート・ファン・ニステルローイがチームを率いていたが、11月11日からはスポルティングCPを指揮していたルベン・アモリムが正式に監督に就任した。
新体制となったユナイテッドが「夢の劇場」で復活することをファンは待ち望んでいる。
著者プロフィール
斉藤健仁 (さいとう・けんじ)
スポーツライター。 1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。2000年からラグビーとサッカーを中心に取材・執筆。ラグビーW杯は2003年から5回連続取材中。主な著書に『ラグビー『観戦力』が高まる』『世界のサッカーエンブレム完全解読ブック』など多数。
【画像】 2024-25シーズン 欧州サッカー注目クラブのフォーメーション
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