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ミランの圧倒的スピードスター、ラファエル・レオン 「理不尽系」モンスターはどのようにプレーするのがベストか

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

西部謙司が考察 サッカースターのセオリー 
第19回 ラファエル・レオン

日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。今回は、セリエAミランの10番、ラファエル・レオン。圧倒的なスピードを持つ「理不尽系」プレーヤーはどのように起用され、今を生きているのか。

【理不尽系ドリブラー】

 188センチの長身と長い足、走り出したら止まらない。そしていつも笑っている。ラファエル・レオンはフィールドのモンスターだ。25歳、ミランではキャプテンマークを巻くようになった。ポルトガル代表でもエース格として定着している。

ミランとポルトガル代表で活躍するラファエル・レオン photo by Getty Imagesミランとポルトガル代表で活躍するラファエル・レオン photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る DFの背後にボールを放り出してしまえば抜ける。スピードが圧倒的なのだ。広いスペースで1対1になったら、止めるのはまず不可能。数は多くないが、こうした理不尽なドリブラーは定期的に現われている。

 ティエリ・アンリ(フランス)は「5メートル・アドバンテージ」を持つ選手と言われていた。DFの背後に5メートルのスペースがあれば、ボールをそこへプッシュしてしまえば競走で勝ててしまうからだ。左サイドに開いて待機していて、サイドチェンジが来たらワンプッシュ。これでだいたいペナルティーエリアまで行けてしまう。

 ミランで大活躍したカカー(ブラジル)も理不尽系。ぐんぐん加速して次々に相手を置き去りにしていくドリブルは圧巻。パスで味方を使うのもうまかったが、ひとりでやる時が一番怖い。

 ガレス・ベイル(ウェールズ)も強烈だった。縦にボールをプッシュしたあと、相手をよけるためにタッチラインの外へ膨らんで走っても、先に追いつけた。

 理不尽系ドリブラーの武器は何と言ってもカウンターアタックで発揮される。まず、間合いというものが全く通じない。普通の選手なら仕掛けない遠い距離からでも、彼らは平気で仕掛けられる。DFは自分の間合いに入れることができない。DFからは届かない距離からボールをプッシュし、届かない場所へ送る。

 普通ならDFが先にボールに追いつきそうなものだが、理不尽系は断然速く先に追いつく。だから理不尽。規格外であり環境破壊とさえ言える。この破壊的ドリブラーに広大なスペースを与えてしまったら、ほぼゴール前まで運ばれてしまう。

 彼らは細かい足技も持っていて、決して速さだけのアタッカーではない。ただ、カウンターさせれば絶対的であり、フェイントなんぞ使わない時のほうがはるかに脅威なのだ。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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