三笘薫、ドリブラーとしての「特殊能力」を発揮 チェルシーでもやっていけることを証明した (2ページ目)
【"タッチライン際の魔術師"を超えて】
試合は立ち上がりから斬るか斬られるかの撃ち合いで、見ていて面白いプレス合戦となった。チェルシー、ブライトンともに好チームだ。
チェルシーはジョゼ・モウリーニョ時代から、伝統的に攻撃的とは言えないサッカーを展開してきたが、今季から采配を振るエンツォ・マレスカ監督は趣を大きく異にする。イタリア人監督では少数派に属する前ブライトン監督ロベルト・デ・ゼルビ似の攻撃的サッカーを志向する。最終ラインを高く保ち、かつボールを保持したいブライトンに対し、高い位置から奪いに行った。
チェルシーで大活躍を演じたのは左利きの1トップ下、コール・パーマー(イングランド代表)だった。前半41分までに、流れのなかから2発、FK1発、PK1本を含む計4ゴールを挙げ、あっさり逆転。ブライトンの反撃をカルロス・バレバ(カメルーン代表)の1点に抑え、前半のうちに4-2とした。
だが三笘の足は鈍らない。見せ場を立て続けに演出した。前半45分、MFマッツ・ウィーファー(オランダ代表)のパスを受けると、寄せてきたチェルシーの右SBギュストをキレッキレのステップで外し、見るものを虜にする。アディショナルタイムに入っても再三、ボールに絡み、48分にはマーカーのギュストに倒され、あわやPKかと疑いたくなるドリブルも見せている。
三笘のドリブルはこのところ、"タッチライン際の魔術師"の域に留まっていない。この時や、先述の前半4分のドリブルもそうだが、大外だけでなく、真ん中でも突破の可能性を高めている。カットインというより、中央をゴールめがけて直進する迫力溢れるドリブルだ。
タッチライン際は180度の世界だ。左ウイングなら対峙する相手は右で構えることになる。この関係で相手の逆を突こうと、そのタイミングを探るのだが、他方、真ん中は360度の世界だ。敵は左右、そして前方でも待ち受ける。ドリブルの難易度はグッと上昇する。中央を切り裂くスピードを保ちながら、それぞれの選手の逆を取る緩急のアクションが求められる。
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