マンチェスター・シティの両翼を務めるドクとボブ 欧州トップリーグのウイングは俊敏性の高い黒人選手が席巻する時代に (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【ウイングと黒人選手の相性のよさ】

 根本的に走る競技であるサッカーだが、陸上競技のような体格体型の選手ばかりではない。陸上競技も距離によって体格の特徴は変わってくるように、サッカーではポジションによってある程度向いている体格がある。

 GKは長身。センターバック(CB)は長身頑健なタイプが求められる。重量感があり、陸上競技のランナーにはあまりいない体型かもしれない。一方、サイドの選手にはスピードが必要なので小柄な選手も少なくない。センターフォワードはさまざまだが、パワー系はCBと似た体型になる。前後と左右の中間にいる中央のMFは、まさに中間的。運動量が必須なので、中距離走者型が多いイメージはある。

 黒人選手といってもさまざまなのだが、それぞれのポジションに求められる走りの性能がよく、とくにスプリント能力がモノを言うウイングは活躍が目立つ。

 イングランド代表のブカヨ・サカ、フランス代表ならキリアン・エムバペとウスマン・デンベレ。スペイン代表のニコ・ウィリアムズ、ラミン・ヤマル。オランダ代表はドニエル・マレン、コーディ・ガクポ。ユーロ2024のベスト4のウイングプレーヤーは大半が黒人選手だった。

 陸上競技の有力トラックランナーの多数が黒人選手であるように、サッカーのウイングプレーヤーも黒人選手で占められるようになるかもしれないし、トップ・オブ・トップでは現にそうなりつつあるわけだ。

 アフリカ系黒人選手導入のパイオニアだったベルギーでは、ドクが代表チームの左の切り札だった。北欧の黒人選手はあまりイメージがないけれども、数が増えていくのは間違いなさそうで、ボブはすでにノルウェー代表に選出されている。

 走る速さだけがウイングのすべてではないが、歴代最高のウイングであるブラジルのガリンシャは、初速のロケットスタートが特徴だった。速筋繊維の割合は生まれつきだそうだから、ほかのポジションに比してウイングはより身体的な才能が影響すると思われる。

 観客席から近いウイングは、昔から花形ポジションだった。1対1で仕掛けていくプレーは興奮を呼ぶ。ドクとボブにも、ウイング特有の華々しさが横溢している。

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プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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